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2014年8月10日 (日)

斧田千晴の詩 『高知の人』

高知の人

   斧田千晴

こんなにも早く
忘れてしまっていいのでしょうか
あの、春の夜の狂騒を
マスコミのたむろする病院内外
刻一刻の変化を全国へ向け
逐一発信される場所
人工呼吸器を取り付けられた死体は
臓器移植をじっと待つ
臨死体験者と共通の事態が起こり得るなら
肉体から抜け出たあなたそのものは
コトの成り行きを見つめながら
首をわずかに傾げたかもしれない
一人の死が
これほど日本中を注目させるとは
想像さえしなかったことでしょう
臓器移植法施工第一例という定冠詞で
人の死の尊厳など瞬時に蹴散らす
放列のフラッシュの暴力
「もう、やめましょう」
医師の呻きともとれる声は
そんな横暴に対して漏れた言葉
あなたの思いは生かされて
全国各地に散っていく臓器
あとを追うのは、カメラと車とマイクたち
レシピエントに投与される大量の免疫抑制剤
終生使い続けるかもしれない数々の薬
他者の臓器という異物をいかに
どうやってねじ伏せ、肉体の一部と化すか
いかに騙して自己化させるか
それが免疫系との戦い
自分を守るはずの免疫力を
最大限落としてなされる移植という医療
心臓が、私は私、と主張する
「私は私」である心臓が
私ではない生体に侵入する医力
レシピエントの体内で
あなたは「私」と叫ぶのだろうか
肉体は死してなお、臓器が残る不思議に
人は科学の勝利だという・・・・
あなたの死は忘れまい
たとえ何十の移植がなされても
かの定冠詞を離れても
マスコミの愚行とともに
永く記憶されねばならぬ死であるのだ
高知の凶暴な夜のことを
私は決して忘れない

  『欣求浄土』中日出版社・平成22年9月23日発行)所収

▼かささぎの旗で斧田千晴

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コメント

ネットで読める高知での臓器移植(臓器移植法施工第一例という定冠詞)についての記事☟

ちはるさん
あの世でも、書きまくっていますか

昨夜、コード・ブルーを見た。
こころがシャンと立ち上がる。
脳死の少年の臓器が提供順位に厳格に従って、全国各地へ散ってゆく、、、
すぐさまオノダのこの詩を想起する。
日本最初の臓器移植の現場を活写してくれてありがとう。
作品を打ち込んだときのわたしは、あまりその意味を考えなかったのだが、今ならわかる。以前よりは。

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