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2014年6月 6日 (金)

命の選択~上野千鶴子

読書日記:今週の筆者は社会学者・上野千鶴子さん 生まれてくる命の選択

毎日新聞 2014年03月25日 東京夕刊

上野千鶴子 東京大名誉教授 社会学者=東京都三鷹市の山本有三記念館で2013年12月12日、内藤絵美撮影                      

上野千鶴子 東京大名誉教授 社会学者=東京都三鷹市の山本有三記念館で2013年12月12日、内藤絵美撮影

 *2月25日〜3月24日

 ■生殖技術−−不妊治療と再生医療は社会に何をもたらすか(柘植あづみ著、2012年)みすず書房

 

 ■いのちを選ぶ社会−−出生前診断のいま(坂井律子著、2013年)NHK出版

 

 ■誰も知らないわたしたちのこと(シモーナ・スパラコ著、2013年)紀伊国屋書店

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 シモーヌ・ド・ボーヴォワールが妊娠を「牝(めす)の屈辱」と呼び、ラディカル・フェミニストのシュラミス・ファイアストーンが「人工子宮」を夢見てからおよそ半世紀。今や生殖技術はSFでも夢でもなくなった。もしかしたら悪夢かもしれないが。

 柘植(つげ)あづみさんの「生殖技術」を読むと、痛感する。いまや他人の精子や卵子、子宮まで使って「自分の子ども」を製造することができるようになった。グローバルな生殖ビジネスまで成立している。

 そこへ出生前診断のハードルが下がった。新型出生前診断、別名無侵襲的出生前遺伝学的検査のこと。フランスは妊婦に出生前診断を制度化していることを知った。その結果障害があることがわかった胎児の9割が、誕生前に中絶されているという。産まれる前の子どもの品質の管理という、臆面もない優生政策が行われているのだ。

 わたしたちの知らないあいだに、いのちの選別が着々とすすんでいる……それを現場からリポートしたのが、NHKのプロデューサー、坂井律子さんの「いのちを選ぶ社会」だ。坂井さんには1999年に「ルポルタージュ出生前診断 生命誕生の現場に何が起きているのか?」(NHK出版)があるが、この10年あまりの間に、出生前診断は深く静かに浸透し、誰にでも容易にアクセス可能なものになっていた。

 いま注目を集めている出生前診断について、香山リカさんも「新型出生前診断と『命の選択』」(祥伝社新書)を書いている。インフォームド・コンセントとは情報を知ったうえで、「選ぶのはあなた」と香山さんは言う。だが、そう言われても……と当事者は困惑するだろう。

 イタリアの作家、シモーナ・スパラコさんの「誰も知らないわたしたちのこと」は、胎児に障害があることがわかって中絶を選んだ女性が主人公だ。選ぶ前も選んだ後も、女主人公は混乱し、懊悩(おうのう)し、のたうちまわる。彼女は決して自分を許さないし、これからの人生でだって決してこのできごとを忘れないだろう。夫と妻の態度の違いも対照的だ。スパラコさんは近く来日、4月4日にイタリア文化会館で講演会「生まれてこなかったあなたへ」を開催の予定とか。

 胎児の遺伝子異常でもっともわかりやすいのが21トリソミーと呼ばれるダウン症の有無である。だが、生まれてくるダウン症の子どもたちは、他の子どもと育て方がちょっと違うだけで、少しの手助けがあれば生きていける子どもたちだ。坂井さんは、ダウン症の子どもを持った親たちの反応を紹介している。親たちの99%はこの子を愛し、生まれてきてよかったと感じている。ダウン症当事者の岩元綾さんが言うように、「生まれてこなくてよかったいのちなど、ない」。

 もう1冊、誰も紹介してくれないから、と自分たちで緊急出版してしまったのが、すぺーすアライズ翻訳・発行のWHO刊「安全な中絶 医療保健技術および政策の手引き(第2版)」。それによると世界的により安全な吸引法が普及しているのに、日本の中絶手術は旧式の危険の多い掻爬(そうは)法が主流なのだとか。まるで中絶手術を受ける女へのペナルティーみたいだ。

 どんなに生殖技術が発達したとしても、産むことも産まないことも、女にはつねに悩ましい。知る権利だけでなく、知らない権利もある。生まれてくる時や生まれ方は選べない。それならどんないのちであれ、生まれてきたいのちをうけとめることに、わたしたちはもう少し謙虚であることはできないだろうか。

(転載記事)

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