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2013年9月30日 (月)

かささぎの旗(その十八)

かささぎの旗(その十八)

               姫野恭子

 

大揚羽芸尽きたれば水を呑む  谷口慎也

 

 たしかにそのように見える蝶のしぐさに、うまく言いとめたものと感心した。まるで、西東三鬼の、滝の句における活写みたいだ。

 

滝爪立ち寒きみなかみ覗くなり 西東三鬼

 

俳句でこのように言い止められて、まざまざとまな裏に浮かぶ景は、たしかに滝のてっぺんでは、しぶきがまるでつま先立っている、そして自分の来し方名残惜しげに振り返って確かめているように見えるものだ。

 

にんげんが隙間だらけの蓮根掘る

               谷川啓彰 

初日さす蓮田無用の茎満てり  西東三鬼

この二句も、良い塩梅に並んいる。谷川の句は、蓮という線香臭いシンボルプラントの根っこを掘るのは、隙だらけの人間である、との俗臭があるからこその俳諧臭だし、三鬼の

は、たしかに蓮田というのは根っこだけが必要で、その他のひろびろとした葉は無用である。夏炉冬扇の俳句がもっとも得意とする表現といえるかもしれない。

 

幻の隙間に齢去年今年   澤田都紀子

澤田には時をよんだ秀逸な句が多くあり、以前、ある日突然年を取る、という句も忘れがたい(。上五忘却、なんでもいいか。)

 

胸中を椿に染める鱒太の忌 杉山スヤ

椿咲く蛇笏の山河ありにけり 城 松喜

 

一月の川一月の谷の中   飯田蛇笏

 

草餅に昭和の匂血の臭   篠原信久

草積みの明日が見えるところまで

            角倉洋子

天領の一水速き花筏   金子美智恵

 うまいと思う。いっすいはやきはないかだ

、天領日田を流れる三隈川、あるいは

その支流のたゆたいがまざと見えてくる。

 

夕焼や鍵に癖ある母の家  北野昭夫

鍵に癖ある、とは言い得て妙。やり方を知っていなければあかない。夕焼が切ない。

 

さまざまのけむりさまざまの春がすみ

               岩坪英子

その中にはコンクラーベの煙もきっとあり。

 

三月の煙立ちたる隠しごと  夢野はる香

三月という季語がぴったり嵌った句と思う。

 

黒豆に皺ひとつなき齢かな  山本悦子

シワ一つなく黒豆を煮るのは年季がいる。

ここは祓戸寒の真ん中また石階 

            藤澤美智子

はらいど、というのは、祓戸主の神につながる道か。ふしぎな句である。

 

鍵の束篝火花の辺に置きぬ  前川弘明

刃を入れて桃を愛していたと思う 〃

 

中年や遠くみのれる夜の桃   三鬼

 

今回は、九州俳句と西東三鬼からまなんだ。

「九州俳句」171号より転載、
 平成25年8月15日発行
 編集発行:福本弘明
 発行所:九州俳句作家協会
 印刷所:山福印刷
谷口慎也先生の俳句月評、毎月拝読しております。
こないだの文章の冒頭は、秀野句でした。
新涼やこちら向くとき鳰の鳥    石橋秀野
おっしゃるとおり、長らく現代俳句をよんでおれば、鳰の貌とやりたいところと思います。
秀野さんは、俳句の最初の師であった高濱虚子を生涯句に宿しておられた俳人だったと思います。
記憶では全句が有季定型句でした。

ところで、上記の文章の句のうち、

にんげんが隙間だらけの蓮根掘る

               谷川啓彰 

夕焼や鍵に癖ある母の家  北野昭夫
のお二人は、ことし九州俳句賞を受賞されています。
どちらも既にベテランの方です。
北野さんが平成二年から、谷川さんは平成四年からと年譜にありますが、
受賞のことばによると、谷川さん、昭和48年から日田寒雷に入会なさって俳句を真剣に学んでおられるのでした。
夕焼やの北野さんのお句を読み、わたしは老人ホームで給食を作っていた頃を思い出しました。夕焼け迫る中、鍵をかけるのですが、その調理室の鍵に癖があって、なかなか刺さりませんでした。
だから、一句を記憶からとりだすとき、つぎのように自分で変形させているのでした。
夕日さす鍵に癖ある母の家    かささぎ版

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コメント

一人、作者名を間違えていますね。
あれは父親ではなく息子さんの方の句でした。
すみません。
飯田龍太。

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