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2012年10月 1日 (月)

自由  月野ぽぽな

自由  月野ぽぽな

山風に川風まざる藤袴

みずうみに深層心理萩の風

日にいくたび陽は戦争の上とおる

花芒あふれて空が止まらない

求めあう体の奥の葛嵐

銃をもつ自由のかなた曼珠沙華

白ききょう傷を見せ合う少女たち

撫子の空にくすぐったいところ

草の絮アダムの指と神の指

音ひとつ灯し銀河に加わりぬ

作者紹介

  • 月野ぽぽな(つきの・ぽぽな)

1965年長野県生まれ。ニューヨーク市在住。金子兜太主宰「海程」同人。現代俳句協会会員。第43回海程新人賞、2009年豆の木賞、第28回現代俳句新人賞、第8回海外日系文芸祭海外日系新聞放送協会会長賞、北米伊藤園俳句グランプリ2011優秀賞、第11回海程会賞受賞。

批評:姫野恭子

まず、この題がいい。自由。

おのずからなる調べと色彩が575の定型五線譜から溢れ出す、この驚き。

季語自体は超がつくほどクラッシックなのに、感性はモダンで若々しい。

それは月野ぽぽなの持って生まれた野生が生み出したものだ。

全句が自然な流れになっていて、その並べ方も素晴らしい。

印象をひとことで表すならば、まるで伊藤若冲の絵のような。

若冲は今でこそポピュラーな画家になったけれども、一昔前まではさほど知られた画家ではなかった。ではいつからこうなったのか。それはまださほど遠くない過去に、アメリカ人のコレクターに発見されたからにほかならない。

かささぎの旗はそのちょうどの節目の美術展に上野の美術館に行って、発見者ジョー・プライスさんのお話を聞く機会を持ちました。(ちなみに抽選でした。)当日の記録は、ここに書いています。2006年ですねえ。
http://tokowotome.cocolog-nifty.com/blog/2006/07/post_9209.html

いちど欧米人によって、よそものによって、発見された美。
それを日本人があらためて美しいと認識する、さも昔からそう感じていたかのように。
こういうのはいくらもあることなんだろうなあ。
印象派の画家たちが浮世絵の美を発見し、その構成美に影響され学んだようにです。

さて、月野ぽぽなの句の魅力。

伝統の季語、藤袴。
それはまさに山風と川風とが混じり合うような地に群れ咲きます。
花芒は揺れて、揺れて、空が揺れているかのようで、とまらない。

求めあう体の奥の葛嵐

クズあらし。
よくこんな渋い季語をさがしてきたものだ。と感心した恋の一句。
葛の葉は恨みくずの葉という歌があるように裏返ると白いのです。
こんな恋句、まだだれも詠んだことはありません。
大胆でありつつ少しも嫌悪感を感じないのは、この季語のおかげだと言っていい。
それほど、必要性があってここにおさまった季語であるように思えます。
いわば、のっぴきならぬ、というやつ。

銃をもつ自由のかなた曼珠沙華

これも、こんな曼珠沙華の赤をこれまで読んだことありません。
いわば、ドラクロワレッドの赤をもった曼珠沙華の一句です。
自由の女神が民衆を率いて戦う、そのいくさに、曼珠沙華を配した。
もちろん、ぽぽなさんの住んでいるアメリカという国では自由の象徴として武器がある、銃があるわけで、その強い力に対等に配されているのが曼珠沙華の赤というところに新しさを感じました。

さいごに、ニューヨーク在住の音楽家、坂本龍一のこの言葉、。

音色、そう。音色が豊かな感じなんだ。月野ぽぽなの句はね。
俳句における音色ってのは、季語と官能とのmatch感だろう。

(以下、引用はイトイしげさとさんのところから失敬してきました)

糸井 音楽家は耳がいいから、
英語の習得も早いでしょ?
(と、音楽の話題にふる)
坂本 うまい、うまい。
糸井 でしょ?
坂本 僕は、だめなんです、それが。
僕はね、たぶん音楽聴いててもね、
人間の言葉ってたぶん
耳に入ってないんだと思うんですよね。
子供の時から。
糸井 お!
坂本 だから、歌なんか覚えたことないし、
自分が歌ったこともほとんどないし。
糸井 おお!
坂本 そうなんですよ。
糸井 その話はちょっとさ、すごいよ。
相撲とりがさ、
「僕は筋肉ないんですよ」って
言ってるみたいな。
すごい話だよ(笑)。
坂本 でも、僕はそうなんですよ。ほんと。
楽器の音は聞えるんだけど、
人間の声はあんまり聞えないのね。
ほんとに馬耳東風みたいな感じで(笑)。
だからね、言葉に対しても、
あんまり敏感じゃないんですよ、耳が。
なぜかわかんない。
一種の失語症じゃないすか。
糸井 つっこみようがないよ、その話。
坂本 別につっこまなくてもいいよ(笑)。
糸井 坂本くんが昔、音色を探すのに
一番時間がかかるって言ってたのを
ものすごく覚えてるんだけど。
「スタジオにこもって、何してんのよ!
 そんな長い時間」って言ったら、
「音色ができないんだよ」って。
坂本 みんなわかんないって言うね。何してるか。
糸井 曲とかは簡単にできちゃってんのに、
音色が見つかんないって話をしてたね。
坂本 曲は、もう、できる時は、
1、2分でできちゃうんだけど、
その曲にとって正しい音色を探すのは、
2時間でも3時間でも。
目をつぶって探してる(笑)。
糸井 その話は好きでさ。
人に言ったら喜ばれるよ。
坂本 そう(笑)?

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コメント

日にいくたび陽は戦争の上とおる

それは考えたことなかった。
まるで漫画のように、太陽がにんげんの表情をして、しかめっつらして戦争を見下ろしては肩をすくめるのが見えるような句です。

オスプレイだけど、こっちの上空もよぎるとおもう。
上津に基地があるし。知らぬが仏ですね。

ぽぽなさん。ごめんね。メールいただいてたのに、返信もせず。

石橋秀野の句作と月野ぽぽなの句作では、方法が異なる。秀野句は生活に密着している。ぽぽな句は一度生活を離れてから、レーダーで霊波を反射させながら自由に詠んでいるかんじ。真面目な顔で言葉遊びも隠れていたりする。
若冲の絵が時々すごく現代性を感じさせるのも、まったく同じです。自然そのものを描いているようでそうじゃなく、自然をデザインし直している。

かささぎの書いていた記事本文の中で、

「音色、そう。音色が豊かな感じなんだ。月野ぽぽなの句はね。
俳句における音色ってのは、季語と官能とのmatch感だろう。」

この部分ですが、これ、かささぎが坂本さん用に書いた台本です。(まあ、ひどいわ。)
ごめんなさい。坂本さん、と、ぽぽなさん。
だって笠詐欺だもの。

やあ。
これ、おもしろいね。
自分が書いたんだけど、よみふけっちゃいました。
ぽぽなさんに不義理しているなあ。

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