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2012年8月15日 (水)

眞鍋呉夫先生がくださった秀野資料

平成十二年七月九日

二日夜半 雲の中から(雲南省の)帰ってきました

同封のコピー 目についたので同封します(ご返信のお心遣いには及びません)

御自愛御健吟を祈ります  不一

  平成庚辰七月九日

     眞鍋呉夫

姫野恭子様

(同封のコピー)

東京平成十二年五月十八日夕刊(と先生の書き込みあり)

日本文学の百年
現代俳句の群像(24)    
      矢島渚男

石橋秀野(1909-47)

 石橋秀野(ひでの)は奈良県天理市に生まれた。奈良盆地のほぼ真ん中、「大声で呼んだら三輪山の反響が二上山にまでとゞきさう」な国中(くんなか)である。小学校を卒業した後、両親に従って上京し、文化学院に入学した。
 この自由教育で名高い学校では短歌は与謝野晶子が、俳句は高浜虚子が教えに来ていた。これ以上の先生の顔ぶれはないだろう。少女たちは大虚子のことを「ウソ子さん」などという渾名(あだな)で呼んだりしていたそうだから、無邪気というのは恐ろしい。彼は古典俳句の解釈と実作を教えた。秀野は優秀な生徒であったようで、俳句に興味を持った彼女は大学部になると、丸ビルの「ホトトギス」発行所に出入りして、虚子の指導を仰ぎ、そこで行われていた婦人句会にも参加している。

 1928(昭和3)年、慶應義塾大学で折口信夫「源氏物語講義」を聴講した際、そこの学生であった石橋貞吉ーのちの筆名・山本健吉ーと知り合って恋に落ち、翌年結婚した。そして夫とともに左翼の地下活動に参加したが、やがて二人は疲れはてて離脱した。
  夫はその後、改造社に入って「俳句研究」の編集者となり、戦後は俳句界をリードする優れた俳句評論を書くことになるのだが、俳句の理解者である秀野の内助の功、夫婦の会話も彼を助けることが多かったはずである。あるいは秀野を通じて俳句が健吉の視野に入ってきたのかもしれない。彼は1939年、草田男、楸邨、波郷らを招いた座談会で「人間探求派」という名称を作って彼らを世に送り出したのであった。

 
 秀野は横光利一の「十日会」に参加、そこへときどき顔を出す石田波郷を知り、彼の「鶴」に参加して句作した。当時の秀野を「女優岸恵子をさらに艶(えん)にした・・・美人」だったと友人の田中澄江は書いている。

  烏賊(いか)食(は)めば隠岐や吹雪と暮るるらん
  鮎打つや石見(いはみ)も果ての山幾つ
  あたたかやむかし一文菓子うまし

 古典的な格調高い作品である。これらは戦火を避けて疎開した島根県の玉造や松江でよまれている。すでに一女の母であった。敗戦後、京都へ転居しているが、戦後の貧しい食糧難のなかで彼女は結核と腎臓病に倒れてしまう。昔の駄菓子を懐かしんでいる最後の句なども、飴(あめ)さえ容易に手に入らなかった当時を思えば何とも悲しい。そして戦後二年目の1947(昭和22)年、病状悪化して九月

  柳絮(りうじよ)とぶや夜に日に咳いてあはれなり
  緑なす松や金欲し命欲し
  裸子をひとり得しのみ礼拝す
  短夜の看(み)とり給ふも縁(えにし)かな
  蝉時雨(せみしぐれ)児は担送車に追ひつけず

などの絶唱を残して京都宇多野結核療養所で死去した。享年三十八歳であった。

 「完璧な女らしい豊かさの中に一種の強さをみなぎらして行くー彼女の俳句はこのやうな方向を指向してゐたやうである」と山本健吉は書いた。師の波郷は「人間あんな句が出来るやうになつては、もう生きて居られますまい」と書いていた。死後、句文集『櫻濃く』が出版されている。

(『櫻濃く』1949年刊、俳句文学館蔵の写真付き記事)

かささぎは、今頃になって眞鍋先生のご厚意と親切に気づく。
当時は、なんだ、これならもう調べていることだから。くらいの気持ちでいたのです。

なんとまあ、横着であったことでありましょう。

矢山哲治についての本を二冊読みましたが、そのどちらの著者も、眞鍋呉夫先生の資料提供にたいへん感謝されていました。わたしはほんとにはずかしい。

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