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2012年7月21日 (土)

眞鍋呉夫追悼歌仙 『びしよぬれのK』

眞鍋呉夫追悼歌仙 『びしよぬれのK』

 捌・前田圭衛子

かなしみつのりくればしろぐつはきもあへず  
                     眞鍋呉夫

  雲ひとひらを残し逝く夏            
                    前田圭衛子
早々に自慢話を切りあげて            
                   竹橋乙四郎
  水は双手(もろて)ですくふものとか 
                    山下整子
後の月薬罐(やくわん)のくぼみ影となり
                    沢 都
 榧(かや)の実橡(とち)の実銀杏が降る 
                    姫野恭子

うら

つれづれにラヂヲなど聞くやゝ寒し    祝 里佳
 道遠くして重き手荷物           八山
呆夢
「モリーママ」
 みなと神戸の香りする  東妙寺らん
 少女のなかの魔女は何色?        恭子
魂を売り払つても逢ふといふ        らん
 凱旋門で三年寝太郎           ぼん
眼をあけて眠るいろくづ去年今年    呉夫
 母の顔して薺(なづな)打ちたる      都
昼時を告げる号砲高らかに         せいこ
 閂(かんぬき)はづす筒袖の僧      恭子
月魄(つきしろ)のゆるり舞ひくる花筏   整子
 誰それ呼びし永きいちにち        都

なお

雀の子おびえてゐるか遅れがち      呆夢
 独身寮の暗き青春             せいこ
ケータイに登録された電話帳        里佳
 おまへを此処(ここ)にはりつけて置かう  整子
廃線に猫ごろごろと山の駅          らん
 雷鳴近く流れゆくなり            ぼん
幻の栖(すみか)となりし冷し酒      呉夫
 言ひたい事も言へぬ現実         りか
ためらひつ魚拓に黒き目玉入れ     都
 故郷(くに)の河川に太き流木      らん
びしよぬれのKが還つてきた月夜    呉夫
 この指とまれ蚯蚓(みみず)鳴くころ   都

なう

露の戸を突き出て寂し釘の先     呉夫
 最中の餡は右に片寄る        恭子
辛口の訛りやさしく心地よく       らん
 お茶はしづかに飲むべかりけり   ぼん
毀(こは)れゆく地球なれども花吹雪  乙四郎
 筑後平野に長閑(のどか)なる風   恭子

時:平成24年7月16日
F1001092処:保健医療経営大学理事長室

かしわばあじさいのおはな。山下家のものです。
写真撮影・八山ぼん
http://houyume1150-4.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-2633.html

とめがきは、かささぎが書かせてもらうことになりました。
いま、うちこんだだけでも、あることにきづいた。

らんちゃんの恋句、。

これはね。じつは、おそるべき深いところから出ていた。
いえ、だれも知らない。
わたしも今知ったばかりなのだから。

かささぎ、眞鍋呉夫について、さっぱり知らないで追悼もなかろうと今日読み始めたばかり。持ってはいたんだよ。資料。一冊だけですが、「こをろ」という文芸同人誌のころの。眞鍋一人について書かれたものではない、多くの同人仲間と時代のこと。

おなじ福岡の矢山哲治(24歳で死亡)の詩です。
読んでみてください。

薔薇のマントを纏った少年達が
噴水のリボンを結んだ少女達とさざめきながら
公園の日向でおひらきにしてゐます。

光線がまばゆくて愉しい声も緑蔭のなかに吸はれていつて
誰にも見えない  私にも見えやしない

一つの鍵を廻さなければ 青春を
悪魔に売った詩人ばかりに
神様のお許しの出た一つの鍵を

昭和16年11月14日 福岡

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コメント

この矢山哲治が「こをろ」を創刊した人です。
立原道造、檀一雄に影響を強く受けている。
こをろ、こおろ。
筑後八女の文芸誌の黄櫨もこうろです。
まだよみはじめたばかりですが、
松原一枝さんもこをろ同人だったのですね。
しらなかったなあ。

へたなこと書けば、すぐ特高につかまり、金輪際文藝はしませんと念書をとられた時代。せんそうに反対したくても、ものをいえなかった時代。だけど、ちゃんと書き残したものは永遠にのこるから。はやく死のうが、遅く死のうが。たましいの筆圧がかかっている。

祝、満尾。
読み返してみると、それぞれみんないい句をつけてるなあと思ったよ。それぞれの個性が感じられる気がします。
なかでも、

>魂を売り払つても逢ふといふ 

らんちゃんのこの一句。
お見事でした。
なかなか、こんな恋句はでまへんで。(歌姫調で)

ところで、今回の座でいちばんの収穫は、
>びしよぬれのKが還つてきた月夜    呉夫
個人的には、この一句に出会えたことかも知れないと思っています。
それほどインパクトのある句でした。
この句ができたときの時代背景を知らずとも、この一句が持つ非常性を読み取るべきでしょうね。短詩系文学をまなぶものとして。
      

>公園の日向でおひらきにしてゐます。


少年達がおひらきにしているのはなに?

>一つの鍵を廻さなければ 青春を
悪魔に売った詩人ばかりに
神様のお許しの出た一つの鍵を

このフレーズから行くと、とうぜん、鍵でしょうね。

じゃあ、「おひらき」ってなに?
「おしまいにする」という意味があります。
その意でしょうか?
難解だ。
まさか、魚を開くという意味の「開き」ではないわよね。
掴めない、わたしには。

いま、読み返してわかった。
青春をおひらきにしてるってことね。
いくさによって青春をだいなしにされたことを。
たいせいにたましいをうりはらって、おもねいた詩ばかり読む詩人たちへの、批判の暗喩。
ああ、時代性がみっちり。

神様がくれたたったひとつの鍵とは、詩人としての、表現の自由。

ああ、やっとすっきりした。

「こをろ」は1939年に創刊号を出して、翌年12月一応、解散、1941年新たな再スタートをした。再スタートをしたときから、これまでの同人という呼び名を廃して友達という名に変えた。規約も「私達はは日本文化を育成したい」として、「『こをろ』は、この趣旨に集った『友達』である」、「『友達』は、この趣旨のために会誌『こをろ』を持つ」として、各自の勉強を強調した。

これはここから、引用しました。
せいちゃん、くいついてくれて、ありがとう。
昔もいまも詩がすきな若者はおなじだよね。
眞鍋呉夫を読み解くカギは、このかなしみつのりくれば。一句だろうと私はおもいます。

露の戸を突き出て寂し釘の先     呉夫

ここから、釘隠しの句にいきつく。
さびしが錆びしとかけられている。
釘のさきっちょだけで、こんなにもわびしく切ない。

さきほどの詩を引用した本には、しつこいほど、こをろこをろと出て来るのに、その書名の出所(古事記)は詳しくは書かれてません。
「鹽(しお)こをろこをろに」かき混ぜて。この「こをろ」だそうです。

満尾おめでとうございます。

 露の戸を突き出て寂し釘の先

 びしょぬれのKが還ってきた月夜

泣けてくる程 の名句に出逢えたこと、幸運です。ありがとうございました。

おひらきにする    あきらめと寂しさの中に決意がある言葉だと思ったよ。 留め書きよろしくお願いします。

この矢山哲治と眞鍋くれおと島尾敏雄が三人で、眞鍋の自宅前で撮った写真があります。三人とも坊主頭、眞鍋は兵隊の服。昭和17年。

田中艸太郎の『「こをろ」の時代』という葦書房から1989年に出た本で、わたしはなぜもっていたのか、自分が買ったのはおぼえていますが、理由はよくわからない。よんでないんだ。それなのに、いまなら、興味にかられてずんずん読める。ふしぎね。本とのかかわり方っていうのは。

松原一枝『改造社と山本実彦』(南方新社)はよんだ。山本健吉が勤めていた出版社だから。石橋貞吉を山本健吉にかえた、その理由がわかるかなと思って。だけどそこまではでていませんでした。しかし、いかにこの山本実彦がすごい編集者だったか、出版経営者だったか、文化創造人だったか、わかった。アインシュタインを招聘したのも、かれでした。

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