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2011年6月 7日 (火)

梨雲100号序文から 漢詩の歴史~今田述

『梨雲』百号序

 葛飾吟社代表理事   菟庵 今田 述

 「漢詩」という日本語は明治末期まで無かった。手元にある明治45年版の『随鴎集』(森槐南主宰の詩誌)にも漢詩という語は見当たらない。中国では「漢詩」といえば一般には漢代の詩を指す。「漢詩」という日本語は大正初期に創られたらしい。奈良時代以降それまでは単に「詩」であった。西欧のポエムの翻訳が漢字かな混じり文で為され、やがて日本人自身が同様な詩を作るようになる。そして大正時代にそれを「詩」と称し、従来の漢字のみの詩を「漢詩」と称するに到った。
 中国では今日でも詩と詞が格律詩の両輪である。これを所管する国家機関は中華詩誌学会という。日本で古典格律詩の短歌や俳句が愛されているのと同じである。詩詞の本家は中国である。だから外国人がそれを詠むとすれば中国に依拠するのは当然であり、中国の詩人や詩壇との交流こそ基本である。今日わが国に七言絶句を書く人が千人以上いるといわれるが、本家の中国詩壇と交流している人は殆どいない。実は中国で出版されるアンソロジーを見ていると、登場するのは殆ど葛飾吟社詩友の作である。作詞法にも誤解が多い。中国の「起承転合」がわが国で「起承転結」と誤り伝えられている。詩の最後が結句では詩情を盛ることは難しい。
 葛飾吟社の主宰中山栄造先生は、徹底して中国詩壇に学び、中国格律詩の手法を極めた。中国詩人は多くの詩形の抽斗を持つ。現在の日本では、歌人は短歌だけ、俳人は俳句だけ、漢詩人は絶句だけ、と抽斗を一つしか持たない。1997年葛飾吟社で「中山栄造短詩研討会に参加したとき、林林翁が中山先生編纂の『詩詞譜』を絶賛して、「日本では詩を詠む人はいるが、詞を詠む人は殆ど居ない。先生は詞の普及を目指すといい。」と語った。葛飾吟社の社友は、皆この教えを守り多くの抽斗を用いている。
 その中で、1980年に創設された新詩形「漢俳」は、日中両国の文化交流の観点から特筆すべきだろう。これは蘇山人以来、百年にわたる中国人の俳句研究の結果生まれた詩形である。漢俳は今世紀に入るころから民間で急速に認知され、民衆詩の様相を持つに到った。ケータイの普及によるメール便が後押ししたという。2005年、中国政府は漢俳学会を設立し劉徳有先生が会長に就任された。発足祝賀会に中山主宰と筆者が、俳句界の金子兜太、有馬朗人氏らとともに招聘された。その後、温家宝首相はじめ多くの政府要人が来日するたびに自作漢俳が日本への敬意表明に献呈されている。しかし漢俳界も俳句界も関心が薄いのは遺憾である。
 この梨雲百号は、その間を通じて、葛飾吟社が中国と交流し、真の中国格律詩を学び、制作してきた集大成である。その間多くの中国詩人の暖かい支援を得た。最大のイベントは2002年の林岫女史と鄭民欽先生の来日講演会である。今回も多くの中国詩人が作品を寄せられた。そのご厚意に心よりお礼申し上げる。日本の現代漢詩人の多くは、李白や杜甫を追って現代中国には背を向けているように見える。しかし俳句や短歌が古典確立を用いても現代の感激を詠うように、中国の格律を用いても現代人は現代を詠うしかない。この一冊がその指針になることを願ってやまない。

梨雲創刊号:2001年4月発行

梨雲100号



梨雲百号:2011年4月発行

作品から

白堤  
  
   詩号  菟庵(今田 述)

白堤放風筝     訳) 白堤風筝(たこ)を放つ
蕉翁魄今天上漂     蕉翁の魄 今 天上を漂い
追慕西施情        追慕せん、西施の情を

鎮江

  菟庵

桐花谷底開    桐花 谷底に開く
莫非呉母媒劉備 呉母 劉備を媒せしを 非する莫れ
紫煙春意濃    紫煙 春意濃し

長江渡輪(フェリー)二首

   菟庵

渡輪發揚州  渡輪(フェリー)揚州を発つ
満載大蒜貨敞車  大蒜を満載せり 貨敞車
一気過長江     一気に長江を過ぐ

渡輪解纜縄     フェリー  纜縄(らんじょう)を解く
忽地眼前浮鑑真  忽ち眼前に浮かぶ鑑真
幻影在春中     幻影 春の中にあり

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