無料ブログはココログ

« | トップページ | フクシマ原発事故後二か月、コメント二つ »

2011年5月12日 (木)

ドイツの社会保障制度(3)                 各保険者の財政上の競争条件を均す調整制度

保健医療経営大学学長
 橋爪 章
2011 年 5 月 12 日 ドイツの社会保障制度(3)

日本の保険制度の非効率性は、個々の保険者の規模の小ささにも由来します。

規模が小さければ、たまたま高額の医療費を要する加入者が集中すれば、外部資金による財政調整が必要となるか、さもなければ保険料の上昇を招くことになります。

ドイツもかつては小さい疾病金庫が乱立していましたが、保険者選択の自由が導入されて以降は、急速に統合が進んでいます。

特に地域疾病金庫は州単位での合併が進み、20分の1くらいの数になっています。

日本にたとえれば、市町村ごとの国民健康保険が、いっぺんに県単位の運営に切り替わったようなものです。

なお、疾病金庫が互いに健全な競争を行うためには、競争条件を揃える必要があります。

そうでなければ、高所得者や若い人を囲い込んだ保険者が圧倒的に有利となってしまいます。

ドイツでは、疾病金庫間で財政調整を行う「リスク構造調整」制度が整っています。

加入者の所得分布や年齢構造などを加味した公平なルールのもとで、有利な疾病金庫から拠出金を徴収して不利な疾病金庫へ交付金を交付することによって疾病金庫間の財政上の競争条件を揃える制度です。

日本にも「調整交付金」などの国庫補助等による財政調整制度がありますが、競争条件を揃えるのではなく、結果(給付費)に対する財政調整なので経営努力を促す仕組みにはなっていません。

なお、ドイツのリスク構造調整制度では、エイズや血友病など特定の疾病を除いては、健康状態の違いは考慮されません。

年齢構造が同じでも、加入者全体の健康状態が悪い疾病金庫は負担が重くなります。

従って、健康状態の良い者だけを加入させる選択がおこりかねませんが、法的には、疾病金庫は加入申込を拒否できません

疾病金庫は加入者に診断書の提出を求めてはなりません。

健康状態まで考慮して財政調整すれば、保険者が加入者の疾病を予防しようとする動機が弱くなってしまいます。

(保健医療経営大学「学長のひとりごと」転載)

▽かささぎの独り言

ドイツのリスク構造調整制度。
保険者がさまざまの条件を抱えることをゆるしながら、マイナス財政へ傾く保険者への補助をプラス財政の保険者のところから持って行って埋めるしくみ、なのですか。
日本の保険制度も保険料だけでは半分の医療費しか支払えないので、税金からあとの半分は持ってくる、っていうのを以前学びました。

と、ことばでかけば、言い回しは違うけれど、おんなじことにおもえる。
どう違うのかは、じっさいに具体的な事例をみないとわからないですが。

連句的に。

きのう、父の手術がおわるのをまっていた家族控室で、べつのご家族のお話を聴く機会がありました。そのお方がおっしゃるには、八女公立病院は黒字、筑後市立病院は赤字なんだそうです。八女が黒字になったのは、保険者が合併統合して大きくなったからだ。と。

それをきいて、はっとしました。
うかつにも、八女はずうっと万年赤字の保険者かと思い込んでいました。
町村合併で赤字は解消していたのでしょうか?
と、こういう仕事をしているくせに、さっぱり目が届いていないかささぎの旗でございました。
工夫、改善を常に怠らない、ということがだいじなのでありますね。

さらにもう一つ、やわらかいはなしを。

やっと昨夜遅く、借りていた「大奥」をみました。
男女逆転の、見たかったのです。くたくたでしたが、根性でみました。
(返さなきゃならないので、もったいなかった)
原作の面白さに勝つことはできていない。
原作;http://tokowotome.cocolog-nifty.com/blog/2006/06/post_bcbe.html
が、それはそれとして、将軍吉宗役の柴崎コウのさばさばしたおとこぎと主役の水野役の二宮和也の弱そうに見えて筋の通った男ぶりが好対照であった。
疫病で男の多くが死に絶え、国の財政は大きく傾き。
という、どことなく今現在に通じる時代設定が内容のとんでもなさをリアルに均す。
華麗に華美に着飾って居並ぶ大奥の美男たち、その中で黒一色の水野の質素が緊縮財政をめざす将軍にうける。
出る、引く。すべてにおいて、このプラスとマイナスの描写が効果的でした。

« | トップページ | フクシマ原発事故後二か月、コメント二つ »

コメント

「schneller」77号より、
「政権交代に揺れるドイツ医療最新報告」 
真野俊樹・レポート。
社会保障を効率化充実化させつつ、経済競争力も高めようとする視点はどこの国もいっしょみたいで、日本が手本としてきたドイツもおなじです。
ことわりもなく失礼とは存じ上げますが、本を送って下さった香川先生へのお礼の意味もこめて、また、竹橋乙四郎先生への恩返しの意味もこめて、この真野俊樹さまの御文章を引用させていただきます。以下、全文が引用であります。

「官僚主義的規定にかわって信頼の文化を必要としているという連立政権の方向に乗り、ドイツにおいては保健大臣であるレスラー氏が人頭保険料という考え方をうちだした。すなわち、思想的には社会保障の再分配機能を排除し、フラットな保険料率にする。一方では保険者機能を維持するために疾病金庫が赤字にならないような保険料構造にし、さらに企業の負担を減らす。そして保険料を支払えない人には、税金から補填するというものである。」
(※その改革のあり方をめぐっては、やりすぎと批判されできない部分もあるようで、一部が導入されているだけのようです。
おおきな病院を現地訪問されてのざっぱざっぱとした、けれどもきちんと見どころを押さえたレポートで、デュッセルドルフには医師会が二つあることなど、さりげなくはさまれたさりげない一言の重みにもうなりつつ、文末のしめくくりのところを、そのまんま引いてまとめとしたい。文章・真野俊樹、引用文責・かささぎの旗姫野。)

「最後に、現地でお話を伺ったマイデル教授の意見を踏まえ、ドイツの医療、中でも医療保障の将来を考え、そのあとで著者の考えを日本の状況に即してのべて、この報告書を終えたい。

マイデル教授によれば、厳しい財政状況を踏まえ、支配的な考え方が3つあるという。
1つの考えは人頭定額制。これはスイスのようなモデルで現在ののCDUとFDPが推している考え方。2つ目が日本型の市民保険という考え方で、これは皆保健のようなものでSPDの考え方。ここにおいてはすべての市民が保険の制度に組み込まれるため、結局民間保険を撤廃することになります。すべての収入が保険料の査定の基礎になるという考え方にもなります。3つ目の考え方はフランス型で、税金によって賄う保険制度。医療基金が作られましたが、これは連邦保険庁という国の役所に属しているため、自然に税金が注入されていくことになります。
前政権の保健大臣はおそらくこれを想定していたのでしょう。」
効率化の一つのあり方として、米国などではITの活用が議論されている。ドイツでもE‐ヘルスということで、診療所や病院、歯科医師、薬局をITでつなぐ構想がある。そのために2007年から国内7地域で7万人規模の実証実験を試みているというが、予算の問題もあって、いったん中止になっているようだ。
 なお、ドイツでのIT環境は両都市(※デュッセルドルフとベルリン)ともよくなかった。泊まったホテルはそれほど悪いホテルではないと思うが、どちらも無線LANはあるものの、かなりスピードが遅かった。ドイツでの病院IT化の遅れを象徴しているような感じがした。このように、政権のぶれ、IT化の遅れなど、日本とドイツは予想以上に似ている部分が多かった。」

引用元 Scheneller 77号
株式会社ファルコバイオシステムズ2011年元旦発行

リスク構造調整
648万件中9位

2位の記事↓

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« | トップページ | フクシマ原発事故後二か月、コメント二つ »

最近のトラックバック

2020年3月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31