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2011年5月19日 (木)

平成24年度診療報酬・介護報酬改定(23)             医療と統計学 静かな津波シミュレーション

保健医療経営大学学長

 橋爪 章

2011 年 5 月 19 日 平成24年度診療報酬・介護報酬改定(23)

先週、WHOが世界保健統計(World Health Statistics 2011)を公表しました。
http://www.who.int/whosis/whostat/2011/en/index.html
これによると、世界の平均寿命は男性が66歳、女性が71歳です。
WHO加盟国193か国を対象とした2009年時点の統計ですが、日本人の平均寿命は、男性が80歳でサンマリノ(82歳)に続きオーストラリア、アイスランド、イスラエル、スイスと並んで第2位、女性は86歳で第1位です。
平均寿命は年齢別死亡率から導かれる指標で、国の医療水準を反映する指標です。
社会保障体制とりわけ医療供給体制が充実すればどの年齢においても死亡率が改善して平均寿命が伸び、医療が後退すれば死亡率が高くなり平均寿命が縮みます。
医療水準は、国民1人あたりどのくらいの医療費を費やしているかを反映します。
数年前、経済協力開発機構(OECD)は1人あたり国民医療費と平均寿命との間に強い正の相関関係があるという報告をしました。
横軸を1人あたり国民医療費、縦軸を平均寿命としてOECD加盟国のデータをプロットすると、例外的な2か国を除き、ほとんどの国は右上がりの直線に沿った分布をしています。
例外的な2か国とは、1人あたり国民医療費が飛び抜けて高いのに平均寿命が短いアメリカと、平均寿命が長いのに1人あたり医療費が飛び抜けて低い日本です。
日本の医療費が低いのは、医療の自由化を阻む国家統制と、医療従事者の自己犠牲的労働強化の賜物であり、日本が例外的だからといって、医療費と平均寿命との相関を否定できるものではありません。
経済成長期には医療費の伸びに呼応して平均寿命も大きく伸び、近年は医療費の伸び悩みに呼応して平均寿命の伸びも鈍化してきています。
以前(4月24日)、このブログで「静かな津波(Silent Tsunami)」という言葉を紹介しました。
津波はいっぺんに数万人、数十万人の命や生活を奪いますが、社会保障の後退でも数万人、数十万人の命や生活が奪われるかもしれない、という話題です。
必要な社会保障予算や医療費が抑制されることは、人為的に生じる「静かな津波」ではないかという仮説です。

この仮説を検証するため、平均寿命すなわち各年齢別死亡率が(最新発表の)平成21年簡易生命表の水準で固定した場合の死亡数の推移と、平成24年から各年齢別死亡率が後退して平成20年簡易生命表の水準で固定した場合の死亡数の推移とをシミュレーションしてみました。
なお計算の基となる各年齢別日本人人口は(最新発表の)平成21年10月現在のデータを平成22年1月1日の近似値としています。

平均寿命が固定あるいは後退した場合の年間死亡数の推移
   1、平成21年水準固定と仮定
       ↓ 2、平成24年から平成20年水準に後退と仮定
22年 112万人   ↓
23年 116万人
24年 120万人 125万人
25年 125万人 129万人
26年 129万人 133万人

各年齢別死亡率の水準が1年後退するだけで、毎年、4万人以上の超過死亡となってしまいます。
毎年の死亡数の増加要因は高齢者の増加によるものですので、超過死亡の多くは75歳以上の後期高齢者ですが、74歳以下でも、毎年、1万人以上が超過死亡することになってしまいます。

74歳以下の年間死亡数の推移
    1、平成21年水準固定と仮定
       ↓ 2、平成24年から平成20年水準に後退と仮定

22年 36.7万人   ↓
23年 36.9万人

24年 37.0万人 38.2万人
25年 37.1万人 38.3万人
26年 37.4万人 38.6万人

「静かな津波」による犠牲者数は相当な数に及ぶ可能性があります。
なお、年初の速報値では、平成22年の年間推計死亡数は119万人と発表されています。
上記シミュレーションの推計値を7万人も超過していますので、早くも平成22年の平均寿命は後退している可能性が濃厚です。
「静かな津波」がわが国を襲っている真っ最中かもしれません。

保健医療経営大学「学長のひとりごと」転載

▽かささぎの独り言

だけどもさ。量と質とは別問題です。

ながけりゃいいってものじゃないでしょう。

いまがその分岐点かもしれません。

ひくこともだいじなんでありましょう。

引くときの波黒黒とありしかな  かささぎ徒歩子

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コメント

「もうすぐ平成22年の死亡数が発表されます。119万人だそうです」
「それで?」
「前年より5万人も増えています」
「高齢者が増えたからだろう」
「そんなに急には増えませんよ」
「死亡者数は毎年増えてるんじゃないか?」
「前の年は減りました」
「シミュレーションの想定数は?」
「112万人です。7万人オーバーです」
「想定外だな。去年、何かあったか」
「おととし後半からわが党が政権に就いています」
「・・・」
「官僚が自主的に動くのを封じています」
「・・・」
「隠蔽しますか?」

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