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2011年2月19日 (土)

国際協力論講義(73) 例8・中国の医薬品の信頼性を高めるための協力

2011 年 2 月 19 日 国際協力論講義(73)

例8)中華人民共和国医薬品安全性評価管理センター日中友好プロジェクト
(2000/7/1~2005/6/30)

http://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2004_0601973_3_s.pdf
協力金額:8億5918万円
先方関係機関:中国国家食品薬品監督管理局(SFDA)、中国薬品生物制品検定所
日本側協力機関:国立医薬品食品衛生研究所、独立行政法人医薬品医療機器総合機構他
協力の背景と協力内容
中国では医薬品の安全性が十分確保されておらず、国民の健康への影響が懸念されています。中国は自国で製造される医薬品を世界各国に輸出していますが、その安全性および信頼性を高めることが課題となっています。このような背景のもと、中国政府は国際的GLP基準(Good Laboratory Practice:「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施基準」)に適合した医薬品の評価を行うために安全性評価管理センターの設立に関する技術協力を日本政府に要請しました。
(1)上位目標
中国における医薬品の安全性が保証される
(2)プロジェクト目標
国際的GLP基準を満たす「医薬品安全性評価管理センター」が整備され、運営される
(3)成果(アウトプット)
1)管理・運営においてGLP基準が遵守される
2)技術指導を通じて試験技術のレベルが高まる
3)試験機器・機材が充実し活用される
(4)投入
日本側:長期専門家派遣:216.9MM(8人)  短期専門家派遣:90.8MM(88人)
研修員受入22人
機材供与2億4972万円  ローカルコスト負担5440万円
相手国側:カウンターパート配置:59人
    ローカルコスト負担9248万元 (11億7449万円)

<終了時評価結果>
医薬品安全性評価管理センターはGLP基準に適合しつつあると判断できます。しかし、プロジェクト目標の「国際的GLP基準を満たした医薬品安全性評価管理センターが整備され、運営される」を達成するためには、被験物質の分析と均一性に関する技術を向上し、発がん性試験の実施とバックグラウンドデータの集積、試験項目や手順をより厳格に遵守したGLP試験を行うことが非常に重要であり、プロジェクト期間中にこれらの点を強化する必要があります。当センターではGLP試験の経験がまだ浅いので、センターが国際的GLP基準に達してそれを維持するためにはGLP遵守の意識をさらに高め、国際的GLP試験の経験を多く積んで様々な事象に対して的確な判断を下せる能力をつける必要があります。さらに自主試験研究が行えるよう努力することも必要です。
妥当性:本プロジェクトの「計画の妥当性」はやや低かったと判断できます。プロジェクト開始前の1999年にGLP規範が試行段階に入り、プロジェクトが開始された当初はGLPの概念が広く普及しておらず、国際レベルのGLP基準に関する議論や認識も曖昧でした。したがって全く新しい概念を導入しようとしたプロジェクトの内容を考慮すると、5年間で達成すべき目標としては、本プロジェクトの目標設定はやや高すぎたと判断できます。さらに、計画ではプロジェクト活動が開始された半年後に安全評価管理センターが完成することになっていました。しかし建設が完成した後にプロジェクト活動を開始した方が、スムーズな立ち上げができたと考えられます。
有効性:プロジェクト目標の達成度はやや低いと判断されました。阻害要因は、(1)「国際GLP」に対する認識の違い、(2)データの信頼性が確保されていないこと、(3)プロジェクト目標の高さ、(4)外部条件のセンター建設の遅延-の4点が挙げられます。「国際GLP」に対する認識については、プロジェクト期間中にわたり中国側と日本側の間にギャップがあり、これを埋めることが困難でした。(2)については、第3者が客観的にデータの信頼性をチェックするスタディオディット(Study Audit)が有効に実施されていないため、本来のGLPの基本であるデータの記載方法が厳格に行われていません。中国ではスタディオディットは施設認定の際に実施されていますが、これは主に施設を対象に調査するもので、日本で実施されているようなデータの信頼性、再現性を担保するようなシステムではありません。(3)については、GLPという新しい概念を現場レベルに浸透させるところからはじめなければならない状況下で、「国際的なGLP水準に達する」という目標はやや高く、まずはGLPを実施できる基盤作りを目指す方が5年間の目標としては妥当だったと考えられます。(4)に関しては、センター建設の計画が約半年遅れ、プロジェクトの活動の進捗、成果やプロジェクト目標の達成度に影響を及ぼしました。
インパクト:本プロジェクトでは、シンポジウム、ワークショップ、地方講演を通じて、地方のGLP施設の運営管理者や技術者にGLPの概念や技術を普及しており、地方の参加者が習得した知識や技術を職場で活用しています。本プロジェクトの実施によって、SFDA自身のGLPに対する意識や理解の促進にも寄与しており、SFDAも医薬品安全性試験に対して具体的な要求を行うようになりました。今後はさらにGLP施設が増加し、海外からの安全性試験の受託も見込まれます。特に、中国はサルの世界的な繁殖供給地であることにより、当センターが最近の新薬開発の中心であるバイオテクノロジー医薬品でサルを用いた安全性試験の分野において重要な役割を果たすことも期待されます。
自立発展性:今後は、GLP管理下での各種試験技術を多く経験し、技術の拡充を図れれば技術面の自立発展性は確保されると見込めます。なお、確実にGLPの経験を総括してGLP管理体制を絶えず整備し、これによって試験データの再現性を保証することが必要です。当センターは中国国内でもナショナルセンターの役割も担っているため、国内のリーダーとして学会への参加、発表や、開発研究を積極的に実践し、知識、技術を普及していくことや、SOP作成に必要な基礎データの収集のための実験(バックグランドデータの集積)、研究(各種機器を用いた基礎データの集積と応用研究)を当センターで継続することが必要不可欠です。
提言:GLP技術の自立発展のために医薬品安全性評価管理センターがGLP試験の経験を重ねることが重要です。GLP試験の実践に際し、スタディオディットを併せて行うことにより、GLP基準の運用を強化すること。
本来、スタディオゥディットはGLPの知識・技術・経験に富んだ第三者によって行われることが望ましいですが、医薬品安全性評価管理センター自らがスタディオディットを行うことによりSOPの不備を自ら発見し、より使いやすいSOPへの改良を継続的に行える体制を整えることも重要です。第三者によってスタディオディットを行う体制と制度はSFDAによって一層の充実が図られるべきですが、内部スタディオディットはQAUの充実強化によってなされるべきです。内部スタディオディットの実施に当たっては、各部門に所属する技術者もQAUと協力し、他部門のGLP実施体制の評価を行うこと。それによって生データの管理体制や再現性が担保される記録記載法など自部門におけるGLP実施体制を反省する機会が拡大するとともに部門間の必要な連携が強化されることが期待されます。
大型機器の消耗品の調達のルートや手続きを明確にすること。
プロジェクト終了までの懸案事項を洗い出し、日本人専門家とカウンターパートとで協力してそれらの解決のための計画を具体的に策定し実施すること。
教訓本プロジェクトではGLPという新しい概念を導入するのに日本で研修を受けたカウンターパートが重要な役割を果たしました。新しい概念を導入する場合、先進的な実践現場を見聞することは効果的です。本プロジェクトではGLPを全職員へ徹底する方策として新人研修を強化し、到達度試験を実施しています。新しい概念を全職員に徹底する方法として新人研修は有効です。本プロジェクトではスタディオディットによって飛躍的にGLPの理解が拡大しました。新しい概念・技術を強化させる方法として専門家による緻密なスーパーバイズは有効な手法です。本プロジェクトではシンポジウム・ワークショップ・地方講演等によりGLPの理解を全国的に広めました。国家の中心的な施設が自らシンポジウム等を積極的に開催することは新しい概念・知識を全国へ普及させるのに有効です。

保健医療経営大学『学長のひとりごと』転載

用語

study audit  研究報告

*au・dit[ dit ]

[名]

1 [U][C]会計検査[監査].

2 監査[決算]報告書.

━━[動](他)

1 〈会計・帳簿を〉検査[監査]する.

2 ((米))〈大学の講義を〉聴講する.

3 〈建物・設備などを〉検査する.

━━(自)会計検査[監査]をする.

[ラテン語audtus (audre聞く+-tus過去分詞語尾). 昔の会計検査は口頭でなされた]

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