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2011年2月12日 (土)

国際協力論講義(72) 例7・中国への予防接種強化プロジェクト

保健医療経営大学学長
 橋爪 章
2011 年 2 月 12 日 国際協力論講義(72)

例7)中華人民共和国予防接種事業強化プロジェクト(2000/6/1~2005/5/31)
http://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2004_0601976_3_s.pdf

協力金額:4億4461万円(機材供与、ローカルコスト負担)
先方関係機関:中国衛生部、中国疾病予防控制中心(中国CDC)
日本側協力機関:国立感染症研究所、国立国際医療センター
協力の背景と協力内容
中国が正式に拡大予防接種計画(EPI)の実施を打ち出したのは1970年代末であり、1980年代に入って児童の免疫スケジュールが策定され、コールドチェーンシステムの整備が進み、全国規模で計画的かつ統一的なスケジュールによる予防接種(BCG、DPT(三種混合)、麻疹、ポリオ)が実施されるようになった。中国衛生部はEPIの強化を保健衛生の重要政策のひとつとして位置付け、これに関わる各種計画の立案と実施に力を入れた結果、EPI活動は全国的に高い水準に達した。しかし、近年の中国の経済的、社会的変化にもかかわらず、貧困地域において予防接種サービスの質的維持が懸念されていた。一部では、注射の安全性が十分確保されていないため、内陸部、特に予防接種事業が遅れている西北地域を対象とする本件プロジェクトの実施を日本政府に要請した。
(1)上位目標
有効で安全なEPIサービスが対象省全域で提供される
(「有効で安全なEPI」とは、適切なサーベイランスの実施、接種率の向上、安全注射の実施を指す)
(2)プロジェクト目標
対象省(山西省、陜西省、甘粛省、青海省、寧夏回族自治区)全域におけるEPIサービスが改善される
(3)成果(アウトプット)
1)安全注射が実施される
2)EPI接種サービスが向上する
3)ポリオ等EPI疾患サーベイランスが強化される
4)EPI情報がオンライン化され、利用される
(4)投入
日本側:長期専門家派遣 8人  短期専門家派遣 67人
研修員受入 19人
機材供与 3億1079万円  ローカルコスト負担 1億3382万円
相手国側
カウンターパート配置 3665人  ローカルコスト負担 232万円

<終了時評価結果>
実績の確認:対象省のパイロット県では安全注射の実施率がほぼ100%になっており、対象5省での「一人一針一筒」の実施に関しても、2000年と2004年を比較すると5省すべてで改善された。四種ワクチン接種率は80%以上で維持されている。各省ともにポリオサーベイランスの結果を綿密にモニタリングしており、政策や対応策へのフィードバック体制が整備されたといえる。ただし、遠隔地や未登録人口へのEPIサービスの普及が遅れている地域もある。本プロジェクトでは、対象5省全域をプロジェクトの対象範囲としているため、EPIサービスの普及が遅れている地域への対応は今後の課題である。
妥当性:プロジェクトの対象地区は中国でも比較的経済開発が遅れている省で、公共サービスであるEPI事業への支援の対象省としたことは妥当だったといえる。プロジェクト初期は、2省をモデル地域とし、他のモデル外対象地域3省へ波及させることとしていたが、日中の協議の結果、プロジェクトの活動実績を踏まえ、モデル地域とモデル外地域の区別をなくすことが適切と判断し、5省をプロジェクトの対象省と位置づけることとした。これは、本プロジェクトが経済効率のよいEPI事業を対象としたプロジェクトだったことと、中国側にEPIの基礎的なシステムが既に確立していたことから、5省に対象を拡大することが可能になったものである。
効率性:2003年にSARSが流行し、中央と省のCDC(疾病予防コントロールセンター)は対応に追われたため、プロジェクトの活動が3~4ヶ月停滞したが、最終的にはプロジェクト活動の大幅な遅延にはならなかった。
本プロジェクトでは、他プロジェクトとの連携も促進された。具体的には、中国側、他ドナー、GAVI(Global Alliance on Vaccine and Immunization)、日本が参加するドナー調整会議が開催され、EPI関連活動の調整やサーベイランスの結果が共有された。その他、JICAの医療特別機材供与によるポリオワクチンの供与(2000~2003年)や無償資金協力「中国西部7省自治区感染症予防推進計画」がプロジェクトの活動を補強したり、GAVIがADシリンジ(1回使い切りの注射器)とB型肝炎ワクチンに対する資金供与を実施した。これらは本プロジェクトと効率的に連携してEPI事業全体をサポートした。
インパクト:予防接種のみならず、病院などの臨床の注射器の回収処理についても、プロジェクトで実施してきた使用済み注射器の回収処理モデルが適用されており、波及効果が認められる。
自立発展性:2004年12月1日に「中華人民共和国伝染病防治法」が改定され、プロジェクト終了後も中国衛生部の活動は中央政府よりサポートを得られると考えられる。
問題点流動人口の増加による未登録人口の問題や、計画外出産の問題があるため、正確なEPI対象人口を把握することが困難だった。

保健医療経営大学「学長のひとりごと」転載

参照記事

「我が国の予防接種政策の出現と発展」で検索したら、一番目にでてきたブログです。よみやすくてわかりやすいです。


http://kenjidou.livedoor.biz/archives/50949939.html

▽かささぎの独り言

へえ。中国にこんな地道な協力を惜しまずにやってきたのですね。
我が国の国民は、このようなことをちっとも知りません。
はじめて知りました。知ってよかったと思います。
さくらさんの日頃の口癖ではないですが、日本は悪いことばかりしてきたわけではありません。こういうことをもっと知らねばなりません。

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