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2011年1月31日 (月)

国際協力論講義(70) 例5)タイ国外傷センタープロジェクト

保健医療経営大学学長
 橋爪 章
2011 年 1 月 31 日 国際協力論講義(70)

例5)タイ国外傷センタープロジェクト2000/72005/6

http://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2004_0601119_3_s.pdf

協力金額:約32,611万円

先方関係機関:コンケン病院外傷センター(TCC)他

日本側協力機関:警察庁、消防庁、大阪市消防局、大阪市立大学、大阪市立総合医療センター、聖マリア病院、他

協力の背景と協力内容

タイ国では都市化に伴い交通事故による死傷者数が急激に増加しており、事故は2番目の死亡原因となっていました。わが国は1991年から1996年までタイ国コンケン県において公衆衛生プロジェクトを実施しましたが、これは、従来からの保健医療サービスシステムの問題点を分析し、計画立案と解決案を実施するという一連の活動を通し、地方都市の現実に即した保健医療システムをつくることを目指すものでした。このプロジェクトの成果のひとつとして、交通事故防止と救急医療サービスの分野が強化され、タイ国政府は国立コンケン病院内に外傷センターを設立しました

1)上位目標

交通事故による外傷ケアおよび予防のモデルが他県に広がる。

タイの交通事故外傷による死亡率が低下する。

2)プロジェクト目標

コンケン県において交通事故外傷による死亡率が低下する。

3)成果

1. 病院における外傷患者ケアが改善する。

2. 外傷のプレホスピタルケアが効果的になる。

3. 交通外傷予防の活動が促進される。

4. コンケン病院に研修・研究センターが設置される。

5. プロジェクトの活動がモデルとして一般化される。

4)投入(評価時点)

日本側:長期専門家派遣 4人  短期専門家派遣 30

研修員受入 29人(うち15人は保健省とコストシェア)

機材供与 13,293万円  現地業務費  4,615万円

相手国側:カウンターパート配置 26

土地・施設(プロジェクト事務室、外傷センター施設)提供

機材購入 8,478万円  ローカルコスト負担  5,361万円

<終了時評価結果>

妥当性交通事故防止と質の高い救急医療サービスの提供は、第9次国家社会経済計画や保健医療セクターの戦略プランの重要項目であり、タイ国のニーズと合致すること、日本政府のタイに対する技術支援は、「社会の成熟化に伴う問題」で「人間の安全保障を担保するため政府部門での対応が必要な分野」を対象としており、本プロジェクトはこの重点分野に合致すること、タイ国における社会的なニーズが高いにも関わらずこの分野を支援しているドナーはWHOJICAのみであり、二者の支援には不必要な重複はないことから本プロジェクトの妥当性は高いと評価されました。

有効性本プロジェクトが全国に先駆けて地域の救急医療サービスシステム(救急車を呼ぶ電話番号の普及、救急指令センターと医療施設・救急車などを結ぶ無線通信システム)を構築したことやヘルメットやシートベルトの着用率が改善していること、本プロジェクトで訓練された救急医療や応急処置に関するコースの受講生はコンケン病院だけでなく、県内の郡病院・慈善団体で知識・技術を活用し、郡部の地域医療の改善につながっていることなどから。よって本プロジェクトの有効性は高いと評価されました。

効率性コンケン病院は独自予算で外傷センター施設を建設し、現地業務費もタイ保健省とのコストシェアが進んだため、活動規模に比べてJICAの経費負担は少なかったことなど、本プロジェクトは効率的だったと評価されました。

インパクト本プロジェクトが本格的に訓練し採用した救急救命士が国家資格として認められ、公衆衛生・看護学校でコースが設けられたという制度的インパクトや、本プロジェクトで行った交通事故防止活動が他県で実施された結果、警察の取締りが強化されたというインパクトが発現している。

自立発展性保健省からの歳入に加えてコンケン病院が独自予算をもっていること、保健省によってTCCがエクセレントセンターに指定されたため特別予算が附与されること、救急医療サービスを実施するため国民一人当たり10バーツの予算が県保健局に割り当てられること、国家保健促進財団からの財政支援が期待できることなどから判断し、財政的な自立発展性は問題ない。技術的自立発展性も高い。

提言コンケン病院や外傷センターでの活動はタイ国内の他県のみならず、他の国々にとっても有用な教訓を含む。保健省がこれらの経験をさらに研究し、他の国々に対する技術協力を行うことは価値がある。

教訓プロジェクト実施の初期段階では、救急患者を受け入れる病院がプレホスピタルケアや交通事故予防活動を行う関係団体間でリーダーシップを取ることは有効である。このアプローチによって様々な関係者が協力しやすくなりうる。

プロジェクト実施に様々な活動や関係者が含まれる場合、協力者・団体間で共通の目標を持つ必要がある。スタッフが高いモチベーションを維持するには「外傷登録」のような実証データを活用して、活動の結果を共有することが大変有効である。

保健医療経営大学『学長のひとりごと』転載

▼きのうのコメント

コメント

自分の国は悪い国だった・・・の自虐史観によるものだと思います。
これではっきり首相の歴史観が見て取れます。

首相の第1条件として「自分の国は良い国だ」と思うことだと思います。

最初の開国は明治維新である。二番目の開国は戦後である。三番目の開国はこれからである。

考え方にはいろいろある。自分たちの考え方が理に合わないものであることを証明するのは難しいことである。だが、それが証明できなければ、おかしな考え方を改めることも難しい。

http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/terasima/diary/200812

http://www.sns.ochatt.jp/c.phtml?g=146488

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▼タイの発電所、日本に丸ごと貸し出しへ
TBS系(JNN) 3月29日(火)18時58分配信

 日本に貸し出されるのは、巨大な煙突、タービン、発電機といった発電設備一式、これを2セットです。発電所ほぼまるごと、日本に移設されます。

 東京電力に貸し出されるのは12万2000キロワットのガスタービン発電設備2機などで、およそ24万世帯分の電力を賄うことができます。この発電設備は日本製で、95年から稼働していますが、現在はピーク時を除いて使われていないため、電力不足に悩む日本に無償で貸し出すことになりました。

 「日本はこの困難に対し決して孤独ではありません。何でもサポートします」(タイ電力公社の社員)

 発電所は分解して船で運び、東京近郊に移設されるということで、東京電力では今年8月の運用開始を目指しています。発電機だけのレンタルはありますが、発電所が丸ごと貸し出されるケースは、世界でも極めて珍しいということです。(29日17:48)

タイからの電力24万所帯分の電力をつくるための装置寄付というありがたい援助は、学長の書かれているような我が国の渾身の地道な援助があってこそのものだとわかりますね。
ところで、今朝ここへたどりついたのも縁。
わたしは、この本文の最下段につけていた、お初の投稿者、nogaさんご紹介のブログをささっと通り過ぎておりました。しかし、これをご覧ください。
こういう方々がかささぎブログをときに訪問してくださっているかと思うと、とってもありがたいです。

タイ王国保健省へ日本国を代表(大袈裟?)して2年間派遣され、国際協力に勤しんだ者としては、タイからのこのような働きかけを心底嬉しく思います。
同時に、プーケットが壊滅したスマトラ津波でタイが苦しんでいた時、ODA不要論が渦巻いていた日本から、復興支援にどれほどの援助ができたのか、恥ずかしい気持ちもこみ上げてきます。

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