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2011年1月25日 (火)

例1)ラオスの総合病院改善プロジェクト実例

保健医療経営大学学長
 橋爪 章
2011 年 1 月 25 日 国際協力論講義(66)

技術協力プロジェクトの実例を紹介します。
例1)ラオス国セタティラート病院改善プロジェクト

http://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2004_0601463_3_s.pdf
協力金額:総額5億3000万円
協力期間:1999年10月1日~2004年9月30日
先方関係機関:ラオス保健省、ヴィエンチャン特別市保健局、セタティラート病院
日本側協力機関
琉球大学医学部、沖縄県医師会、沖縄県
協力の背景と協力内容
セタティラート病院は病床数175床、医師数75名を含む290名の医療従事者を擁する総合病院です。ラオス国北部地域における中核的医療機関であるとともに、医科大学生の臨床教育、医師の卒後教育を担う医育機関でもあります。
ラオス政府は、セタティラート病院の医療水準と卒後研修機能等のレベルアップを実現し、もってラオス国全体の医療水準の底上げを図るべく、我が国に対し技術協力を要請しました。
我が国ではこれを受けて、無償資金協力による新病院建設を実施し、2000年11月に新病院が完工しました。
新病院の完工に先立ち、1999年10月1日より本プロジェクトが開始されました。
(1)上位目標
1.カルテシステム、患者データのコンピュータ化、治療食、郡病院に対する研修などの、
セタティラート病院における成果が、ラオスの他病院で採用される。
2.ラオス国内で診断・治療を受ける患者が増加する。
3.他の医療施設からの検査依頼が増加する。
4.周辺国の病院との技術交換が行われる。

(2)プロジェクト目標
セタティラート病院の医療サービス及び研修機能が向上する。
(3)成果
1.セタティラート病院の臨床各部門の臨床技術と知識が向上する。
2.セタティラート病院の検査部門の技術と知識が向上する。
3.セタティラート病院の薬剤部門の技術と知識が向上する。
4.セタティラート病院の看護部門の技能と知識が向上する。
5.セタティラート病院の病院管理部門の機能が向上する。
6.セタティラート病院の院内設備・機器が必要なときに使用可能な状態に維持される。
7.セタティラート病院の病院食提供サービスが改善される。
8.医師の卒後研修機能が向上する。
9.地域病院(ヴィエンチャン特別市各郡病院および周辺2県の中心郡病院)と、セタティラート病院との間の
リファラルシステム( Referral System 重症患者紹介システム)が改善される。
(4)日本側投入
長期専門家派遣 延べ 15名
短期専門家派遣 延べ 31名
研修員受入 18名
機材供与 約146,000千円
ローカルコスト負担 約3,000万円

<終了時評価結果>evaluation
9つの成果について、A、B、Cの3段階の有効性の評価が行われました。
B、Cの評価は成果達成度が十分ではなかったということになります。
A評価は「1.臨床部門」「2.検査部門」「3.薬剤部門」「6.設備・機器維持」
B評価は「4.看護部門」「5.病院管理部門」「9.リファラルシステム」
C評価は「7.病院食提供」及び「8.卒後研修機能」

また、本プロジェクトは次のインパクトを生みました。
○病院関係者を始め、患者や一般市民から、最新医療機材を整えたラオスで誇るべき病院との評判を得た。
○本プロジェクトの実施によって、他の病院分の政府予算が削られるといった状況を作り出していない。
○CTスキャンなどの検査のためタイに流れていた患者がセタティラート病院で同検査を受けるようになった。
検査部門は他病院や民間企業からの受注・委託が増大し、ヴィエンチャン市におけるリファレンスセンターとしての機能を持ちつつある。
郡病院スタッフへの継続的な研修は効果が高く、リファラル強化のモデルとなった。
看護部門の2交代制は定着の途上ではあるが、近代的病院としての標準を示すことが出来た。
○病院を訪れる数多い患者を効率的に診察できる病院体制が、ある程度整いつつある。

自立発展性の評価では、財務面において、コストシェアリングの意識の徹底やリボルビングファンド*の創設などが高く評価されました。
技術面においても、高度で高額な精密機器についてメンテナンス会社との契約による維持管理体制が整っているなどが高く評価されました。
また、カウンターパートの離職がほとんどないことも評価されました

プロジェクトへは、終了時評価調査団から以下のような提言が行われました。
○若手看護師へのOnthe Job Training(OJT)プログラムを策定すべきであること。
○管理部門のスタッフを増やすこと。
○定期点検シートのような自己評価体制を整える必要があること。
○病院食提供サービスに代わる食事指導体制を充実すべきこと。
○医師の卒後研修を体系的に行うこと。その前提条件として、まず患者データを記録し、データの利用を容易にすること。
○郡病院から紹介された患者の診断・治療方針の紹介元への返答率が低かった原因を追究し、改善すべきこと。

本プロジェクトからは教訓として、周辺国での研修を含む技術協力が有効であったこと、英語学習が効果的であったこと、モニタリングシートは柔軟な改変が行われるべきであること、琉球大学とのパートナーシップが強まったことは有意義であったことなどが得られました。

保健医療経営大学『学長のひとりごと』転載

用語解説

*リボルビングファンド;使用例:http://www.jica.go.jp/project/dominica/0602991/02/index.html

▽ リボルビングファンド
リボルビングファンド(回転基金)とは、プロジェクトが農民に対し資機材を供与し、その資機材を使って農業生産を行い、得られる利益から返済するシステムです。プロジェクトは、返済された資金を使って他の農民への投入を行い、活動を広げていくことを目指します。本プロジェクトにおいては、簡易灌漑農業の導入にかかる資機材及びアグロフォレストリーの果樹苗木に適用します。

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