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2010年9月25日 (土)

国際協力論講義(1) ~情は人のためならず~

保健医療経営大学学長

 橋爪 章

2010 年 9 月 25 日 国際協力論講義(1)

国際協力の必要性 ~情は人のためならず~
地球規模で取り組まなければならない課題があります。
(気候変動、食糧問題、感染症対策など)
国と国とが協力し、課題解決に取り組まなければなりません。
先進国同士の協力は当然ですが、先進国人口は地球人口の18%に過ぎず、開発途上国との協力なしには地球規模の課題は解決できません。
多くの開発途上国では、貧困、感染症、環境汚染、紛争など、一国では解決できない問題を抱えています。
これらの問題は、国境を越えて、国際社会全体の危機となり、日本へも影響が及びます。
日本政府の「政府開発援助大綱」でも、ODAの目的を「国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じてわが国の安全と繁栄の確保に資すること」としており、日本の安全と繁栄の確保のために国際貢献を行うという姿勢を明確にしています。

「政府開発援助」という用語はODA(Official Development Assistance)の直訳ですが、開発の担い手は途上国に住む人々自身であるというのが日本のODAの基本理念ですので、「援助」より「国際協力」という用語のほうがしっくりきます。
日本のODA実施機関は「国際協力機構」(JICA:Japan International Cooperation Agency)です。
なお、発展途上国であればどの国とでも国際協力できるわけではありません。
政府開発援助大綱では、ODA実施の基準が次のように明示されています。
日本のODAが軍事流用されたり、環境汚染や民主化逆行のおそれがある国との国際協力はできません。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
国際連合憲章の諸原則(特に、主権、平等及び内政不干渉)及び以下の諸点を踏まえ、開発途上国の援助需要、経済社会状況、二国間関係などを総合的に判断の上、ODAを実施するものとする。

1 環境と開発を両立させる。
2 軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する。
3 テロや大量破壊兵器の拡散を防止するなど国際平和と安定を維持・強化するとともに、開発途上国はその国内資源を自国の経済社会開発のために適正かつ優先的に配分すべきであるとの観点から、開発途上国の軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入などの動向に十分注意を払う。
4 開発途上国における民主化の促進、市場経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払う。

(保健医療経営大学「学長のひとりごと」)

▼かささぎの独り言

以下は上記学長の記事とも連携する、民間の一医師の活動報告です。
なぜかちょっと古い新聞が丁度手元にあり、うちこんでくれといいます。
それで、連句的にご紹介いたします。福岡の人です。

西日本新聞7月4日付け朝刊トップ記事より丸写しごめんなさい。

『奇跡 砂漠で田植え
     ~死の谷に命吹き込む水

    中村 哲
これは夢か幻か。
夏の東部アフガニスタン。一木一草も生えぬガンべり砂漠。
気温は時に50度を超える。その炎天下で田植えが始まった。
「砂漠で田植え」とはあり得るのか。
少し説明がいる。
昨年8月、東部アフガンで24.3キロのマルワリード用水路が7年がかりで開通したことは報告した。
この末端が砂漠を横断するもので、すでに潤された二千数百ヘクタールに加え、約一千ヘクタールの農地を新たに生み出そうとしている。そのうち約200ヘクタールをわれわれの試験農場とし、開墾を進めている。現在約22ヘクタールが農地として使えるようになり、一部に水稲栽培を始めたのだ。
ガンべり砂漠はアフガン東部では有名で、幅4キロ、長さ20キロ、ジャララバードからラグマン州に至る近道だが、古くから「死の谷」として知られる。幾多の旅人を葬り去り、ソ連軍の戦車隊にも恐れられた。ここを通るものは、かなたに浮かぶ緑地が近くに見えて道を急ぎ、しばしば水無し地獄の中で力尽きてたおれる。東部の住民の間では、「ガンべりのようにのどが渇く」という言い回しがあるほどである。そこを用水路が貫通したので、地元には奇跡として大きな話題になった。
現在、その開墾が進んでおり、少しずつ緑が広がっている。だが、これまでの灌漑地域は、乾燥化で廃村となった所だったので、村人たちが戻って来ると、回復が早かった。だが、今回はまったくの新開地である。砂丘をならし、砂防林を造成し、熱風を避ける植林、灌漑・排水路網の整備など、膨大な努力が要る。完全な農地化が実現するまで、5年の歳月を見込んでいる。
全体から見ればわずかな土地の田植えといえども、用水路建設が始まって7年、やっとその恵みの結実を実感する画期的な瞬間だったのである。
          
    ◆       ◆

これに先立って行われた作付けがスイカで、昨年の近隣農家にならって初めての収穫となった。試験農場だから売買はできないが、毎日1~3トンの収穫がある。日本、韓国、パキスタン、アフガン原産ら各種の生産高と味を比較している。最も人気のあるのが日本種で、糖度が高くておいしく、手ごろな大きさである。毎日毎日、600人の作業員たちに配られるが、それでも食べきれない。砂漠の至る所にスイカの皮が散乱し、それを家畜が食べ、脱ぷんする。こうして土地が肥えてゆく。
近隣農家を合わせると、膨大な量が出荷され、ジャララバードのスイカの値段が半額まで落ち、今や貧乏な庶民でも買えるようになった。さらに、ペシャワールやカブールにも進出し、「ガンべり」は安くておいしいスイカの名産地として名をとどろかせた。
水の恵みはこればかりではない。草地が広がると牧童達が家畜を連れて集まり、畜産も可能である。その他、養蜂、果樹栽培、薪の生産・・・。およそ基本的な生活に必要なものはほとんど生産できる。大きな貯水池で養魚もできる。用水路着工の7年前、ガンべり砂漠でまさか田植えをするとは夢にも思わなかった。死の谷が命の緑野に変じたのだ。

    ◆      ◆

先日、いつも通るジャララバード近郊の橋で米兵の車列が攻撃され、7人の米兵が死亡した。動てんした米兵が、数百メートル先で水遊びする子どもたちに向かって乱射、4人が死んだ。ひどい話である(ニュースでは「市民を巻き添えにしたテロ攻撃」と発表され、それが世界中に流された)。
もはや外国軍に敵意を持たぬ市民の方が、珍しいであろう。
道義上すでに敗北した彼らは、何を守ろうとするのか。
嘘が嘘を呼んで膨らむ架空の世界は、根拠を失って崩壊する。
命を軽んじて天意から離れ、人の分を超えた思いあがりや虚飾は、滅亡に至る道である。
与えられた恵みを忘れ、殺戮に狂奔する姿は、哀れである。
今、砂漠で田植えを行い、死の谷が命の緑野に変ぼうするさまを見るとき、確たる恵みの実感とともに、世界中にはびこる狂気や不安の運動から自由であることに感謝せずにおれない。
(随時掲載)  ペシャワール会現地代表・中村哲医師(63歳)

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コメント

>先日、いつも通るジャララバード近郊の橋で米兵の車列が攻撃され、7人の米兵が死亡した。動てんした米兵が、数百メートル先で水遊びする子どもたちに向かって乱射、4人が死んだ。ひどい話である(ニュースでは「市民を巻き添えにしたテロ攻撃」と発表され、それが世界中に流された)。

廣田弘毅の南京事件の部分引用と、橋爪一郎従軍記を学んだおかげか、これを読んでも、ひどい話だと一概に非難する思いがおきない。むしろ、こどもを巻き添えにしてしまった米兵に同情すらわいてくる。

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