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2010年3月31日 (水)

澤好摩句集よりこの十句

ものかげの長き授乳や日本海    澤 好摩

麦に尿(ま)る大日如来はるのくれ    〃

夕日絡めて蜜の壜より蜜の糸       〃


セーターを脱ぐとき昼の海の匂い     〃

木を跨ぐ木や虚空墜ちかかり       〃

凭るるは柱がよけれ妹よ          〃

裏窓の雪富士男のこころざし        〃

降る雪の湯船・馬槽(うまぶね)・水漬く舟  〃

秋冷の川波に来る海の波        〃

草萌えて水車に至る樋(とい)の水   〃
 

 現代俳句文庫64『澤 好摩句集』より引用
 ふらんす堂 2009年1月22日発行

一句目。このような一句が、おんなではなく、おとこの頭の中から生まれてきたことに、言い知れぬ感動を覚えた。

かれは、いったい、妻のことを詠んでいたのであろうか。
それとも、自分の母のことを詠んでいたのであろうか。

と、そんなことはどうでもよい。

句をよんでいるうち、かんかん照りの暑いひと日、木陰でいっとき遠くに海を見ながら、赤ん坊だった三人の子達へ、それから赤ん坊だった今はここにいっしょにいない夫へ、授乳している母のやさしいきもちになれる。
そんな深いふところの一句である。

追い書き(4月1日記す):

上記を勤めに出る前のわずかな時間で書いて、あとで思ったのだが、どうもこのよみは間違っているような気がした。
そんなふうに読んではいけないような気がした。

そんなのどかな授乳風景では全くなく、これは、映画の一部分のように読み、だれか知らないが生活に疲れたおんなが、考え事をしながら、うすぼんやりと放心状態の態で授乳をしている。あかんぼうはもうとっくに寝入っている。日本海のくらい海鳴りが陰性のイメージをつれてくる。ものかげは夏の木陰とは限らない。けれども日本の家屋独特の庇の深い、その下で、海の香りをどこかで嗅ぎながら、ではあるのだろう。映画をみるように、一句が立ち上がってくる。それがこの句であった。

コメント

>夕日絡めて蜜の壜より蜜の糸

昨夜、いただきものの蜂蜜の封を切ったばかり。
スプーンにねっとりと垂れる蜂蜜の情景をどうにか恋句にできないかしらと思った矢先でした。

夕陽を絡める蜜の糸。
これでじゅうぶんに恋句ですね。

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コメント

>夕日絡めて蜜の壜より蜜の糸

昨夜、いただきものの蜂蜜の封を切ったばかり。
スプーンにねっとりと垂れる蜂蜜の情景をどうにか恋句にできないかしらと思った矢先でした。

夕陽を絡める密の糸。
これでじゅうぶんに恋句ですね。

きのう、やっと封を切って開いた。
円錐89号。ことし四月発行なのに開封もしていなかったとは驚きだ。いかにコロナ騒動に夢中だったかということなんだが。
ひらいたら、まっさきに次の一句が目に飛び込んでくる。

堵列して幸はありなむ雪の街  澤 好摩

私もいただいていた、澤好摩句集『返照』のなかの一句です。
何一つ感想もお礼も申し述べませんで失礼のかぎりをつくしておりますが、わたしもいただいたとき、記憶では去年の冬でしたか、いくつか読めない漢字がありましたので、それを字引で調べるのが面倒で、というよりか、人をためすようなかんじで、とうみょうじらんにわがガラケーのcメールで尋ねてみたら、らんちゃんじゃなくその夫で歌人の古賀音彦さんがしらべてくださいました。
とれつ、堵列する、というのは、垣根のようにならぶことなんだってさ。へえー!

そのとき私の脳裏にすぐ浮かんだのは、ちょうど娘から聞いたばかりだったからかもしれないけど、いっとき前に流行したタピオカが博多にも上陸して近くにお店ができたから、そこにわざわざ行列して買って飲んだ、という話のことでした。
懐かしいですね、タピオカのはやりは短かったですね。
で、一句の読みなんですが、
円錐同人の栗林浩さんの読みをよんで、さらに深まりました。
栗林さんは配給の時代を知っておられるそうで、食糧や薪炭をもとめて列に並んだその時代から、いまの時代の入管手続きで並ぶ列のお国柄の違いまで叙しておられた。へえー!
さらにはそんなしあわせにつらなる景ばかりではなく、ユダヤ人の収容所にむかう長い列はどうだったかというところまでかんがえた、とありました。
そうなんです。一句に書かれているのは、さち、とありますから、しあわせな場面なんだけれども、とれつ、という字づら、および、音の響きには、なぜか陰のイメージがある気がする。
ちなみに一句をまとめる音がT音で、とれつ、さち、まち。

印象的な一句です。いや、音彦さんがわざわざ調べてくださったのに、ありがと、とランちゃんに言ったっきりで、かささぎの労働の日常に戻ってしまって、感想もどこにも記さず、申し訳なかった。
それを真っ先におもいだしたので、ここに記す次第です。

時代はまた不穏な状況になりつつありますね。
食糧燃料配給の時代がくるのかもしれない。

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