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2009年2月26日 (木)

川柳誌  2008年点鐘雑唱  

かささぎの旗では、縁ある方々から戴いた御句集、同人誌を時間の許す限り紹介したいと思っております。けさは、れぎおんの表紙絵とカット絵でもおなじみの堺市の柳人・墨作二郎氏が地道に二十年以上に亘って発行しつづけてこられた『点鐘(てんしょう)』誌の年に一度のアンソロジーをご紹介いたします。
あとがきをまえがきといたします。本日はパート1。
現代川柳の潮流が概観できるかと思います。
スミサクさん、毎年ありがとうございます。
しっかり読んでおります。俳句と交わりつつ俳句を超える気概。
連句の雑の部で出したい句がたくさんある。
恋句も俳句より多いし、有季定型川柳もある。
連句人も数人いらっしゃって、お!と思いながら読んだ。
ただ、時事川柳は弱い。
これはしようがない。政局や世の中の動きがものすごく速くなっている。
(余談ながらきのうもお上からわが職場に失業者対策の処置をするから福岡まで出向くようにとのお達しみたいなお誘いの電話が何度もありましたが、はっきりいってありがた迷惑。おそすぎる。あとひとつきもせぬうち、最需要期はおわる。それ過ぎたら交通誘導警備業界は閑散となり季節労働者はさる。もっとはよせんかい。とおもった。)
いま読んで意味がわからぬ時事詠だろうと思われる句が散見された。
そういうのは毎朝、サラリーマン川柳でよむべきなのだろう。
普遍とはある意味、真っ向勝負の世界、それが川柳だから。

『点鐘雑唱』2008年刊

  現代川柳・点鐘の会

▼あとがき   墨 作二郎

恒例通り「点鐘雑唱」を発行して、それも二十二冊になる。
思えば多難の年であったと感慨は殊更深い。
漢字一字が「変」と決まって、経済不況は殊更に深刻。
この先も尚変転を予想される。
この様な時代に川柳をどう書けば良いのだろうか。
時に先達の存念を聞いて見たいとも思うばかりである。
点鐘の会も二十三年を迎え、常に「これからの川柳」を目指し、新たな川柳開拓を心がけて来た。新しい仲間が増えることにより、共々研究を怠らぬようにと心掛けている。「点鐘雑唱」は一年の成果を纏めたものであるが、繰返し読んで吟味して頂きたい。
点鐘誌への投句者も順次変化しつつあるが川柳に対する情熱は忘れず進展しつつあると自負している。相互に教えられて実力が向上するのである。点鐘勉強会も点鐘散歩会も一途に前向きで、その成果の程を常に好もしくしている。今後は更に深遠なる充実を心掛けたいばかりである。
先に「点鐘散歩会」の記録を一冊にしたが好評であった。
これは一重に取纏めに懸命だった有志の尽力によるもので感謝のほかはない。
この様に点鐘の会の今後は、良い仲間の協力体制で守られていることを忘れてはならない。各々に一層の活躍が望まれるのである。
新しい年を迎えて新しい作品が発表される。
その進歩と啓発を心より願っている。

   平成二十年十二月

作品

墨 作二郎

版画には番屋風景 硝子の浮き玉
万華鏡つぶやき ゲルニカ空転する
いつの世の銀貨 ゴンドラ着地点
壁に魔女の仮面が並ぶ エプロン売場
「蟹工船」時間差 銀行でない銀行
石柱にテニヲハ二月 迷彩服
橋の向こうは雪屋根 座り胼胝
思い出したように花に水やる 終戦忌

渡辺隆夫

補聴器を切ると桃源郷にいた
とげ抜きに来る銀座カンカン娘
原油高騰につき風葬可・水葬可
亀鳴くと鳴かぬ亀来て取り囲む
女将の特技は種回し皿まわし
農水の阿保ぼけなすび油むし

里上京子

縋りたい藁がなんだかわからぬが
鏡はだませてもだませない心
朝顔の蔓にきわどい視線あり
繋がったままの短縮ボタンあり
ボランティアの名札を鼻にかけている

中村迷々亭

共稼ぎ槍と楯とを持ち替える
遮光紙をやぶり遠景たしかめる
耐え抜いた人を乗せてる人力車
合鍵に一人じゃないと言い聞かせ
錆びたナイフ隙間だらけのピカソの絵

佐藤純一

爪が伸びたらブランコから下りる
うすば蜉蝣 十年日記書き出して
菜の花のはるか彼方に霊柩車
老婆心ながらと梯子はずされる
また曲がっているメランコリーな胡瓜

小池正博

湯豆腐やいくつあってもいい命
欄干の猫でもやはり怖いですか
善悪は垣根くぐってから決まる
木星が好きで月見うどんが好きで
指は蝋燭 火を消すときの心地よさ

春城武庫坊

決断の無痛無意識手術は無事
三日月に歩け歩けと連れ出され
癌手術して正月料理見てるだけ
いくつになってもチャンバラの血は熱い
もう七月 体重ふえぬ日が続く
蝉は合唱 気温が上るだけのこと

本多洋子

八ヶ岳冠雪ノコギリ岳いびつ
大仏の背なにぽっかり虚空の虚
泣きべそをかく外陣のおびんづる
なまはげ怒らせ山暗がりに雨
泣ぐ子いねーか介護保険は払えるか
いざという時の右手に紙コップ

南野 勝彦

一人になる子供になる私になる
今日もまた反戦の蝉鳴いている
やかましいと僕は言えない八月の蝉
汗を急ぐ いいことだったらいいのだが
赤とんぼこうしていよう暮れるまで
夏越した金魚の水を替えている

瀧 正治

昼の闇ぎっしり詰めるダンボール
記念樹が植えた順から枯れてゆく
カーナビで浄土の手前までは行く
神様が鳴らす自動の鐘搗き機
活断層の真上に当たる避難場所
哲学に浸る医院の待ち時間

瀬尾照一

七草粥から忘れずに小豆粥
ポケットに手を入れている負けている
単線の窓にちらり大和三山ちらり
新キャベツ新ジャガ おっと病院食
赤も黄もカンナは凛と立つ女
あさがおの元気を見てるひとりっ子

進藤一車

えにしときずな それに首吊り縄がある
冤罪や無人ピアノが鳴っている
駄菓子屋の匂い   後期高齢の匂い

杉戸金一

言霊がこれほど軽い日本語
ランキング本が完売 軽い脳ミソ
避難所か迷路か判らぬ案内図
こんなにも薄く切れるかマグロのお刺身

行列が出来ると 脳はむき出しに

阪本高士

ふるさとの景色を春の大皿に
みどり・緑 ちょっと昔のことですが
満月を見ているわがままなふたり
真っ白い猫が座っているページ
痛いところにそっと止まった糸トンボ

児玉怡子

読みかけの文庫本置き 爪を剪る
金木犀 
むかしの匂いすれ違う
海の高さと坂の高さが同じ家
一日いちにち蜜柑熟れゆく加齢かな
日本中が祭り 不景気な話

伊東マコ

煮びたしの茄子に根性説いてみる

井上恵津子

先生のオルガンに逢う皿うどん

小田明美

雪催い 今宵無口の人といて
ビロードの闇ちりちりと遠花火
あの夏に堕ちていきます火の花弁

今井和子

朝の自転車野鳩の声にせかされて
りんご割るその時ふっと母も居る
星を見上げて 
私を少し光らせて
ほのぼのと砂場に遊ぶ帽子たち
古い言葉の優しさはとっておく

岩崎千佐子

ぬくもりを一匙すくう散蓮華
猿芝居の猿の覚悟が落ちている
つぎはぎの堪忍袋裏返す
転がりながらみんなわすれてゆく手毬
言い訳を買いに走ったことがある
指揮棒が手垢まみれになってきた

岩田多佳子

足早に空き缶蹴って次の辻
サボテンに花を咲かせてさようなら
片虹を揺らし尺取虫の反り
わたくしの背なのビオラの軋む音


上野楽生

故郷が相撲甚句に盛ってある
遠い日の夢に出てくる紙芝居
介護付きホームが胸を張っている
右ひだり見てアメリカを見て立ち泳ぎ
原っぱに整列している ゴミ袋

大橋あけみ

介護まだ小さな傘が置き去りに
掌の中の海が溢れる日向ぼこ
ごった煮の中で人間らしくなる

小河柳女

信じるものは 裏の畑の茄子南瓜
表紙だけ変わる世相の深海魚
俎板の窪みで残照を刻む
秋の蝶耳の運河を抜けて 藪
食卓の欠けたところに黄水仙
裏口から入る やさしい人だった

笠嶋恵美子

喝采でサーカス小屋が揺れている
体温になるまで絵の具溶いている
雑音を吸いとる大き目のカンバス
原色に触れると指が熱くなる
ぼんやりと見ているマーメードの乳房
踊り場で欠伸している 日銀
列島の腰のあたりが病んでいる

加藤かずこ

ひび割れの街で孤独なロボットよ
煮沸する昨日の余罪消すために
鍵穴をするりと抜ける仔猫たち
少しずつ男が沈むスープ皿
ガタガタの巣箱をゆする老ふたり
逆転はなかった 父のちびた靴

神谷 三八朗

積めば崩れる 崩れたら積む石よ
ゆるい坂だがこの頃歳のことを言う
誰でもいい用だから 君に頼む
本心を聴診器にも聞かせたか
逢った土橋は別れる土橋 昼の月
踏切で待つのも旅のうちのこと

川上千寿枝

八幡宮鳩文字 日傘揺れている
正面から反対はせぬ 石庭の白
正論の通らぬ不況 海猫よ
棚田百選 金子みすゞの風が吹く
春の扉のひとつ開いて苺摘む
イエスマンの人生でした杉花粉
「吾亦紅」唄えば母の微笑んで

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コメント

順番とか句数とかに意図はありません。
かささぎが気ままに開いた頁順。
出句数はもともと各人ばらばらです。
それとおしまいがた、句のおおきさがガクッとちいさくなっているのは、機械のやろうがいうことをきかないせいでやんす。すんません。
いくらなんでもひどいので、パート2に移動も考えている。
では今日も中くらい元気でいってきます。

ほんとうに、連句にいただきたいような句ばかりです。
田辺聖子さんは川柳の芸術性をいつも言っておられます。俳人が川柳を毛嫌いするのがわからんて。
いいものは良いよね。今月「樹」に出す俳句、もういっぺんかんがえなおそ。今読んだ川柳に刺激されたよ。

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