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2009年2月23日 (月)

風媒花2  足立 攝

随想

風媒花(2)

  類句・類想問題とコンピュータ

     足立 攝

俳句は「世界最短の詩」であると形容されることが多い。
十七文字を基本として、その中に人生観や世界観を凝縮させるのだから、奇跡の文学といえるだろう。俳句を始めてその奥深さに驚かされている。

しかし俳句のこの短さは、同時に宿命的な問題を内包する。
その一つが「類句・類想問題」であろう。好むと好まざるとにかかわらず、俳句を愛好するものは、いつもこの問題と隣り合わせでいる。

類想を避けるため、表面的、類型的な捉え方をやめ、自分なりの突っ込んだ表現をするようにと説く選者もいるようだ。これは有益なことに違いないが、要するに「より良い俳句をつくりなさい」というのとほとんど同義であり、類句・類想問題の解決に迫っているとはあまり言えないのではないだろうか。

最近気になったものに、例えば今年の「原爆忌東京俳句大会」の作品がある。

原爆忌ことんことんと電車来る  河村 正浩

この作品は、本来大会の上位入賞句のはずであったが、大会実行委員会により取り消された。実行委員会の「ご報告」に次のような一文がある。
「(この句は)昨年第二位となった古川麦子さんの作品〈広島忌ごつんごつんと朝が来る〉との類似性を検討の結果入賞としませんでした」

ー 私は実行委員会の決定にケチをつけるつもりは毛頭ないが、「ことんことんと電車来る」と「ごつんごつんと朝が来る」に入賞を取り消すだけの類似性が認められるかどうか疑問が解けないでいる。河村氏の「電車」は、いわゆるチンチン電車のことだろう。広島も、長崎も、日本で数少なくなった路面電車の走っている都市である。かつて灼熱の光線と放射線に破壊された都市も、今では何事もなかったように電車が走っている。その路面電車ののんびり走る様子が的確に捉えられているではないか。
「ことんことん」はチンチン電車だから説得力を持つのであって、東京でいう電車、すなわち「列車」では単なる観念的な擬音になってしまう。その辺の感覚が東京の実行委員に伝わらなかったための入賞取り消しではあるまいか。どちらの作品もすばらしいので残念でならない。

さて、類句・類想問題に最終的な決着をつけるのは、コンピュータによるデータベース化以外にないと思っている。私自身がそれを生業としているから強くそう思う。なぜ類句・類想問題がしばしば人間性や道徳の問題となるのか不思議でならないのである。

コンピュータのもっとも得意とする分野が抽出、分類などを含む情報処理である。最近は曖昧な検索も自在にできるようになり、実用化の条件が整った。何を可とし、何を不可とするのかの基準を整え、実用新案の特許と同様に、全国レベルの申請主義で先行作品を保護すればいい。

その準備をする時期が、すでに到来しているのではなかろうか。

   足立 攝  大分在住

 超結社季刊俳句誌『九州俳句』153号より引用
      平成21年2月15日発行
   北九州市 福本弘明事務局長
   編集委員 堀川かずこ
     〃    夢野はる香 

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コメント

「(この句は)昨年第二位となった古川麦子さんの作品〈広島忌ごつんごつんと朝が来る〉との類似性を検討の結果入賞としませんでした」

これは、いたしかたないと思うのですが、ね。


原爆忌ことんことんと電車来る  

長崎ならではの句でしょうね、たしかに。「ことんことん」の擬音が朴訥な路面電車をリアルに表現していると思う。
でも、やっぱり、韻律のみならず、「広島忌」と「原爆忌」  「ごつんごつんと」と「ことんことんと」、そして「来る」の重なり。
意識的に昨年のを模写したのではないかと思われてもしかたないかな、と。
むしろ、本歌どりとして、楽しむべきものであったかも知れぬと思いさえする。ひょっとしたら、ご本人は、はなっから、そのおつもりだったのではないでしょうか。

多分 足立さんの意図は句の佳さを賞賛するとこにはない
どっちも明日には忘れてしまう句だ
しかし こんなかきかたしかできなかったのは仕方ないことだよ

せぃこさん
この足立攝さんは多分私達よりずっと若い男性だけど その物を観る目はとても広くて深い人だね
ここでせぃこさんがきちんと書いてくれたのが嬉しかった
矢張ネイティブやめりかんやん

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