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2009年1月26日 (月)

連歌師3・宗長  鶴崎裕雄

連歌師ー政治的な、あまりにも政治的な人たち

      鶴崎裕雄

宗長その2

こうした縁で宗長は、実隆を通して禁裏御料所の年貢の催促を頼まれることもあった。実隆の日記『実隆公記』永正七年1510五月七日条に、実隆が宗長に返事を書き、武蔵国住人三田弾正が所望している書物も書き遣わしたと記した後、

 就中上総国畔蒜庄者御服御料所也、件在書摩利谷某当時押領也、彼者三田弾正知音也、内々可相語試之由申之、予奉書所望之由宗長申之間、調愚状下賜三田弾正了、

と記す。畔蒜荘は千葉県君津市・木更津市の小櫃川流域にあった禁裏御料所の荘園である。これが小櫃川上流の真利谷に本拠を持つ上総武田氏に押領された。武蔵の勝沼(東京都青梅市)の三田氏は上総の武田氏と親しいという。実隆は顔の利く宗長に三田氏を通して武田氏に働きかけてくれるよう頼むのである。そのため宗長の指示通り三田氏が所望している書物を書き遣わし、奉書を用意するのである。奉書は女房奉書だろうか。

このように宗長は仲介を得意とした。いや、仲介の労を執るのが好きであったのかもしれない。宗長が得意げに語る仲介の話、それは『宇津山記』に記された永正十四年春の出来事である。宗長は今川氏親より甲斐国の勝山城(甲府市)に包囲された駿河勢二千余人の解放を交渉するよう依頼された。
「貴命そむきがたくて」というように氏親の依頼どころか厳命である。武田氏の支配する甲斐国に内紛が生じた。氏親は甲斐の国人と言い合わせて二千人余の兵を甲斐国に投入した。ところが甲斐の国人が心変わりして、駿河勢が勝山城に包囲されてしまった。宗長は甲斐の知人の館に入って交渉に臨んだ。甲斐の知人とは武田信虎である。『宇津山記』には、

 廿八日知人の館にいたりぬ。一折の連歌興行。

 世は春とおもふや霞峰の雪

 五十日におよび敵味方にさまざま老心をつくし、まことにいつはりうちまぜて、三月二日、二千余人一人のつゝがもなくしりぞき・・・

とある。「真に偽り打ち混ぜて」とは交渉の様が彷彿とする。
「一人の恙もなく退き」こそ宗長の誇りであろう。
相手の館に着くや連歌を始めるところがいかにも連歌師である。
相手も宗長と連歌をすることを心待ちにしていた。
その瞬間をぬって交渉の糸口を捜す。

宗長が交渉に連歌会を使うのは『東路のつと』にも見える。永正六年1509のこと、宗長は関東一円の歌枕を求め、日光や草津を巡った。白川関にも脚を伸ばそうとしたが、生憎の合戦と洪水のため、断念を余儀なくされた。その途中、江戸で上杉建芳に会って建長寺天源庵のために領地の交渉をした。

 江戸の館に六七日におよべり。連歌三百韻あり。

 霜寒き松ゆく田鶴の朝日かな
 雪は今朝水に積れるみぞれかな
 遠山に心は雪の朝戸かな    建芳

 「心は雪の」といへるあたり、古めかしくてしかもまた珍しげ也。一日隔てて、面白かりし会席也。
即ち、かの天源庵領二か所、返しつけらるべきよし、厳重のことなり。顕方も一所あり、同じく返しつけ畢る。都鄙今の折ふしには、希有のことなるべし。

とある。建芳は上杉朝良の法名。朝良は扇谷上杉氏の一族の出身で、養子になり、扇谷上杉氏の家督を継いだ。扇谷上杉氏は山内上杉氏と争いを繰り返しており、永正元年には武蔵の立河原(立川市)で山内上杉勢を破ったものの、翌年には川越城で大敗し、家督を養子朝興に譲って江戸館に隠棲していた。隠棲生活の徒然、宗長との連歌に心を和ませた朝良は宗長の申し入れを聞き入れ、天源庵領の返還に応じた。しかも顕方の押領した天源庵領まで返されることになった。顕方は長尾顕方、山内上杉氏の重臣。これら天源庵領がどこにあったのか、朝良と顕方との交渉がどのようになされたのか、不明であるが、宗長が「都鄙今の折節には希有のこと」というように、押領された荘園が返還されることは、当時としては珍しいことであった。なお群書類従本や太宰府天満宮西高辻家本には顕芳のことは書かれていない。

(つづく。あと一回分あります、宗長。・・・かささぎ)

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