無料ブログはココログ

« 蝸牛 | トップページ | 自己紹介、英語で。 »

2008年9月 9日 (火)

最後の恋

歌仙 『コンビニで』

コンビニで本買はさるる梅雨の底   恭子
  賞味期限の長き紫陽花     兼坊
レンズ越しリボンとりどり巻かれゐて さくら
  明治生まれの祖母を寿ぐ   千晴
良宵の雲流れつき山の里      都 
  循環バスを降りるこほろぎ   宙虫

裏  

ハロウィンの仮装のままに整体師  かぐや
   バカボンママを理想の女と   恭
言の葉のつなぎかたさへまだ知らず ぼん
   仕舞ひ忘れしむらたまの樞(くる) 
 
東京を北京に重ね齢かさね    乙四郎
   汚染されたる雪が降りしく   坊
温室は破裂した月光(かげ)でいつぱい  朝世
   急ぐ余りに靴を片方     ぼん
妻子なきおじさんの買ふメロンパン  晴
      誰にもらひし匂袋よ        さくら
いたづらに移らせまいぞ花の色     乙
   烏が鳴いて帰る出替り       晴

名残表    

春耕の島は真水の音がする  虫
   よかったですね、ところでなにが 整

熱弁の講演終はりぐったりと   兼
     参拝客のつづく杉並  さくら
外宮(とつみや)に
大宜都比売の祀られて  恭
  蜂の巣退治屋根裏を焼く   呆
潮風の波間に浮かぶハンモック   乙
  スプモーニから泡は生まれる  整

付案
1 肩越しの鏡のなかにゐるけもの   虫

2  四畳半引くに引かれぬ畜生    ばど
3 真鍮のうらまでみせてのぼりつめ  そらん再考句
4  緋縅の裏までみせてのぼりつめ  捌一直句

整理します。

ここの打越には月がでる位置です。
朝、整子さん、ぼんさん、二人が声を揃えて絶賛したように、1のけものは生きて存在します。どこがすごいかといえば、自分で自分をけものと見ている目がすごい。ほんとに鏡のなかの自分と目があったような迫力がある。
一方、けちをつけるとすれば、かがみ。鏡は月と通う。
既視感があると私が思ったのは、前回巻いた歌仙で、「雪鳴らし獣が月を食いにくる」というそらんさんの名句が出たのをどこか思わせるからです。

ばどさんは又もや飛び入り。
無視しようと思いましたが、目がいってしまう何かがある。
上手へたをいえば、決して上手な人ではない。
たぶん本も読まない人だろうと思います。毎日酒かっくらって、ばくちを打ち放題、きっと借金で首がまわんない。女房こどもにゃ逃げられて。いくらいいわけをなさっても、それだけは見てきたように思い描けます。
だが言葉足らずに訴えかけてくる句には、生活の染みがある。
ひとことでいえば、よごれ。それがなければ、俳諧の意味もない。
ただプレーンな上品な句が延々と続いていくばかりで。

エロチシズムの句は、色っぽい句であると同時に、生の原点をみせてくれるものでなければならない。その生身感はどこにあるか。どこから来るか。生老病死の苦から。

私が鏡句に抵抗があったのは、昔の言葉でいうブルジョア的な退廃感があるからだ。
ここはもっと追い込まれた恋を置きたかった。だから戦場の恋か生活苦の恋を詠みたかった。
真鍮の句はわかります。つかみどころがない。つめたくて。よそよそしくて。そのような人がはだかになる安堵感。でもいまいちてざわりがない。

最終選択

1 潮風の波間に浮かぶハンモック   乙
    スプモーニから泡は生まれる  整
  四畳半引くに引かれぬ畜生    ばど

引くに引かれぬ。「退くに退かれぬ。畜生以下の動物だ」という読みと、大きな牛みたいな男を引こうとするけれど、びくともしない。この牛野郎め!出てけ!もうあんたの顔もみたくないんだから。という修羅場の恋と、二つのよみができる。(と思いませんか)。
意のままにならない恋の焦燥感。畜生は仏教用語、だからこれは釈教句です。

2 潮風の波間に浮かぶハンモック   乙
    スプモーニから泡は生まれる  整
  緋縅の裏までみせてのぼりつめ  宙 

この「のぼりつめ」という言い方が、前句の泡についていた。
だから最初のそらん句でもすぐ目に留まった。

のぼりつめても消えるだけのうたかた。
武士たちはどのように恋をしたのだろう。
明日をもしれぬ身であればこそ、恋が大事であったろう。
いまみたいに、デジタルネイティヴが増えてきて、セックスレスが当たり前の世の中になってくると、男が男であった戦場を背景にした恋が、うらやましくなってくる。

ということで。結論。

私は、この歌仙に初めてさくらさんを誘いました。
乙四郎とさくらさんとのふしぎな出会いは、戦争がキーワードとしてあります。
その出会いに立ち会えたかささぎとしては、2をいただいて、さくらさんに恋という言葉をいれた短句をそえてもらえたら・・と思うものです。あるいは恋の心情を短句にしてください。(その理由は、のぼりつめ、だけではやや弱いか・・と思ったからです。)

« 蝸牛 | トップページ | 自己紹介、英語で。 »

コメント

捌きの見事な手腕に敬意を表します。私はまだ初心者なので、感覚でしか、人の作品を捉えることができません。捌きのように、きちんと理由があって、さらに自分の意見をいえるようになるには・・・やはり、30年の月日がいるんでしょうね。生きとるやろうか?

>恋という言葉をいれた短句をそえてもらえたら・

七七ですか?
五七五ですか?

こんなこともわかりませんです。

さくらさん。みじかいほうです。
七七。よろしくおねがいします。

乙四郎さんに頂いた渋谷幽哉さんのりっぱなご本、近いうちにアメリカに行きます。
そして又いつの日か日本に戻ってきます。

電話ありがとう。

姫野さんがどう導きたかったかやっとわかった。
ちょっと待ってね。

あせがりました。「あせがる」、せかすという意味の方言です、。
わたしは、さくらさんの背後にいらっしゃるかたに、参加していただきたかった。時代を超えて。
さくらさんに依頼しておきながら、自分ならここ、どんな恋句をつけるだろうかと考えてみた。見せ場なわけで。すると脈絡なく前田圭衛子師のこんな句が浮かんだ。
  
 玫瑰低く吹かれゆく恋

玫瑰(はまなす)は夏だから、又もどってしまうのですが。
でも理想をいえば、こんなかんじ。こんな風情の句を。はかなくてかそけくて、気分の暗示だけの句・・・

おいおい。初心者に酷だよね。笑


>はかなくてかそけくて、気分の暗示だけの句・・・

そぎゃなこと言われましても、あーた。

そぎゃなことをいわれてもあーた。
ひさしぶりでききました。トラエばあちゃんやヨソノばあちゃんたちのおかおが浮かんでは消えます。
じぶんのよかーごつ、すりゃよかじゃんの。
とまた、どこかから聞こえてきます。
うちのはるしゃんばあちゃん。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 最後の恋:

» 星空 [31文字倉庫]
今朝は4時45分に起床。というより、ひこまるに起こされた。しっこに行きたかったら [続きを読む]

« 蝸牛 | トップページ | 自己紹介、英語で。 »

最近のトラックバック

2020年2月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29