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2008年8月 9日 (土)

むらたまの樞

むらたまの樞(くる)に釘さしかためとし
    妹がこゝり(心)は揺(あよ)くなめかも
           
         刑部志加麻呂(をさかべのしかまろ)

先日、自己流の勝手な読みをつけた歌です。
折口信夫の解説を、引いておきます。
以下、引用。旧字を変えました。

「下総人の歌の中から採った。むらたまのぬばたまのと一つらしく思はれる。ここでは、くるにかかる枕詞。くるは所謂樞クルである。ここは樞戸クルドの事と思へばよい。扉の返らぬやうに戸に釘をさすのである。
「かためとし」は方言発音で、かためてしである。口がためによって、動かぬ誓約をしあったのである。「あよく」は以前は危くだといふことになっていた。だが、橋木進吉さんの説、あよくは動(あよ)くだとする考へによるべきだらう。「揺ぎなむかも」の意で、あれほど口がためはしたけれど、年月を経た遠人(とほびと)の心は、揺ぎそめて居るだらうと言ふのだ。
「危(あよ)く」説は「危く無めかも」危い気遣ひはなからうと言ふことで、全然反対になる。以前は私も、この考へであった。よい学説が出て見れば、間違った考へは霧散するものである。併し又、さうなれば、「あよぎなむかも」と言ふよりは、「あよぐらむかも」として、あよいでゐるだらうよ、すなはち揺いでゐるだらうと訓み解く方が、もっと正しいと思ふ。旅の久しさを歎いたのである。

(4390)樞戸に釘をさす其ではないが、かため誓った彼女の心が今は、ゆらいでるだろうよ。

『戀の座』  折口信夫・著
 昭和24・2・25発行
 日本出版配給株式会社・配給

追記:

http://www.juno.dti.ne.jp/~pure/manyou/manyou-20.htm

http://www4.ocn.ne.jp/~sakai-h/year/year1.htm

八月十一日、検索でみつけた読みと時代資料です。

ああ、この読みがいちばんですね。なるほどです。
この歌は防人歌だったようです。読みの中の三年という数字は任期でしょう。
いまは、そういう資料も豊富にありますが、昭和の敗戦直後にはまだ何もなかったのでしょう。原文を見てみたい。万葉仮名はどんな表記になっているのかな。

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コメント

この文章を読み、読みにゆれがあることを知る。私の思い込みだが、折口信夫には出生にまつわる秘密があって、そのためにとても強いコンプレックスを抱え込んでいる。性的なことへの忌避感。ふつうに読めば、とぼそにとまらをさしこむ式のくるるは、ずばり性交の暗喩だ。ところが、彼は、口がためと言っている。そうではない。歌は、こういってる。あのときしるしをつけていれば、おもいびとの心は揺れなくてすんだのに。(と、おもいませんか)

この際連句的にかいてしまおう。

山本健吉の昭和二十年代の随筆に折口信夫の『死者の書』についてのべたものがある。わたしはそれを読んで、なぜか健吉は文章に託して、そ知らぬ顔で、まなむすめの受難をそれとなく訴えているのではなかろうかと下衆の勘繰りをしてしまう。折口信夫が中将姫説話を書いたのは、きっと自分の幼いころのつらい体験が下敷きにあったんだろうと思う。むかしの、日本の家屋の、大家族の性がどんなことをもたらしたか。自分はおばの子であったのではないか。折口はそう感じていたらしいから。じっさいそうだったのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。でも、大切なのは、そういうアイデンティティーのぐらつきの中おとなになった少年のこころのゆくえである。
いっぽう健吉は、同志であった妻に先立たれ、一人娘を抱えて奮闘していた。再婚は妻の死の二年後。健吉は後妻との間に子はいない。なにも書かれていないから想像するだけだが、継子いじめのはなしを題材にした折口の中将姫説話をとりあげて、なにかをのべる健吉のおもいのなかに、ある種のシンパシーがなかったろうか。なさぬ仲の母とむすめを日々背後からみていて、ぐっと熱い思いをこらえる場面が、きっとあったはずである。子をもつとは、そういうことだ。人の子は、ついに人の子だから。そして、おんなはいくつになっても、おんなだったろう。そこには母になれなかった女性のかなしみがあっただろう。

以上は、すべて私の想像であることをお断りいたしまして、関係者のきぶんを害することがあれば、それは私の意図することから外れますので、深くおわびいたします。

名前に貼り付けました。『死者の書』。

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