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2008年5月28日 (水)

なつかしき傷

     貞永まこと

月光にわづかに揺れる台秤
ゆく秋へ炊かれて尖るインディカ米
先端に犀をのせたる残暑かな
古井戸や三井三池の草いきれ
十二月八日横流れする兄の雲
初あかり人のむかしを絞めにくる
なつかしき傷をあつめて石榴かな
秋は風おろかな壁に糸をつけ
うすものや夜のみじかき指あそび
やわらかく喉より抜けば眉の月
春コート任地の島へ橋は無く
人体に替芯入れる夕焼けかな
昏睡の耳に吹きこむ花だより
病棟にある搬出口春の月
口吸えば鹿の声する津軽かな
戸のかげに骨がきている油照り
労働祭われ等あの日へ傘がない
屈まねば磨けぬ便器聖五月
銀の一兵卒に白兵戦
泣くまいと夜汽車はうごく四温かな

 第32回九州俳句賞受賞作
『九州俳句』誌 150号より転載

白兵戦

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E5%85%B5%E6%88%A6

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コメント

なつかしいなあ。

人混みに君に似し姿を見つけたときの心躍りとかいう啄木の歌がありますが、重たいカバンのレインコートの後ろ姿に時時感じます。

まことさんって、こんな句を詠まれていたのですね。

まことさんと初めてお会いしたのは、星野の山んなかでした。
わたしはまだ、俳句のハの字も、連句のレの字も分かっていませんでした。
そんなど素人のわたしを座におられたどの方もが大らかな目で見てくださっていたことを思い出します。
立膝の歌姫も鍬塚レディも、そしてまことさんも。

見よう見まねでとりあえず、俳句をやっている今、まことさんのこの句のすばらしさが実感できます。
なつかしき疵も、人体に入れ替える芯も、昏睡の耳も、かがまねば磨けぬ便器も、ああ、なんと個性に充ちた句であることよ。
あらためて、彼がとてつもなく偉大な、俳人貞永まこと、であったことを思い知った気持ちです。

うん。ほんとうに。
男気のあるいいおとこだったし、だれよりも句に色気があった。誠実で純情で一本気で、人のために泣くことも怒ることもよくやっていた。酒好きで人好きで、さびしがりやで泣き虫で。連句をずっとつきあってくれて、意識が朦朧となるまでつきあってくれて、。貞永まことといっしょに連句をやれたことをとても誇りに思います。
上記、書き写しながら、意味のとれない句が一句あった。初めて気付きました。

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