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2007年11月 4日 (日)

六の宮の姫君

   捨てられた姫君

            妙島秋男

 芥川龍之介に『六の宮の姫君』という悲しい短編小説がある。ただ、この小説は原作の『今昔物語』の説話をそのまま現代語に置き換えたようで、芥川の創作力が光っているわけではない。原作が本当にすぐれた作品なのである。

 古風に何一つ自分から動くことなく育てられた美しい姫君が、父母の死後、乳母の手引きで男とむすばれるのだが、その男は受領となった父とともに陸奥に下っていってしまう。はかなく品良く生きているだけの姫君は、その後零落して、数年後には朱雀門のところで破れ筵に寝ているという状況になってしまった。それを帰京して姫君を捜していた男が見つける。その男を認めた姫君は驚き、そのまま死んでしまうというような粗筋である。

 最後の姫君の歌は 

 たまくらのすきまの風もさむかりき
   身はならはしのものにざりける

 この話は、『拾遺集』にあるこの歌の歌語りなのであろう。平安時代の、父や夫に経済的に依存しているだけで、ただ運命に翻弄される女の悲劇として、印象に残る話である。芥川は内記の上人(慶滋保胤)を登場させて、「あれは極楽も地獄も知らぬ、不甲斐ない女の魂でござる」と言わせている。芥川自身のことばなのであろう。 

(以下略。)

連句誌れぎおん2007年秋 59号より
歌仙『新緑や』の留書としてかかれたものです。
粗筋をこれほど的確にまとめられているのはすばらしい。
私には決して書けない文章だなあ。

追記)

きのうは月初めで請求書を書く仕事があり、慌しく出社しました。その前にばたばたと上記を打ち込んで、帰宅後読み返せば、さいごのきめぜりふの「あれは天国も地獄も知らない」と書かれてた部分を、「天国も極楽も知らない」ってふうに誤記していることに気づきました。
それで、あれ?とおもった次第。原典にあたると、

法師は月光に顔を

もた

げた。

っていう一行詩みたいなフレーズのあと、でてきます。天国じゃなく極楽も地獄も知らぬ、となってました。

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