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2007年10月 5日 (金)

土  1

essay 土  1

            姫野 恭子

平成十年睦月半ば、八女市にこの冬初めてといえる雪が積もった。八女市の地理的な位置を簡単に説明すると、九州島のかたちをそのまま凝縮したような形の福岡県の南部にあり、南、東、北の三方を八女郡という大いなる山間部に囲まれてはいるものの、唯一山がなくてひらけた西南部の先には有明海がある(もっとも海の手前には柳川などの地あり)。

その昔、有明海はもっと内陸部まで侵食していたはずだ。というのは八女の地名には津の江とか川崎とか柳島、福島など海に関連したものが多くあるからだ。津は港だから。

 今昔
 の風
 津(わたしば)に
 人の
 声

     瀧 春樹の書より

八女市内には約350もの古墳があるらしいのだが、なかでも古代九州の王・磐井の生前墓がある丘陵の東端にある童男山古墳では、例年1月20日に「童男山ふすべ」という徐福の霊を鎮める行事がおこなわれている。江戸時代から細々と続いているとのことで、古墳の前で村人と児童が火をふすべて(焚いて)、おおむかし、たくさんの童男童女を引き連れて上陸した徐福の霊を祀る神事をとりおこなっている。

秦の始皇帝に不老長寿の妙薬を持ち帰るように命じられた徐福が、日本のどこかに漂着した伝説は全国各地に20近くあるらしいが、今尚お祭りしているところは珍しいのではなかろうか。始皇帝といえば紀元前3世紀だ。いくら昔の人でも、ありもしない薬をさがしてこいと国を追われた徐福は、左遷された要人だったのだろうか。こんな渡来人からきっとわれわれのご先祖さまは当時のハイテクや文化を習得したのにちがいない。

    ◇

昨年の師走に夫の父が他界した。義父は「大東亜戦争」中、軍人で教育者だった祖父の任地の台湾で青年期までを送っている。
さて、義弟が再婚した。夫のただ一人の弟である。事情があって、父親の死に目にも会えなかったかれが、フィリピン女性と再婚して子どもも出来たという。兄である夫は激怒したが、母である姑は最近その女性に会い、かつての日本人女性が備えていた美徳=質素、謙虚、従順=を見抜き、こころうたれ、「良かった。これであの子は立ち直れる」 とよろこぶ。彼女の田舎には電気もガスもなにもないらしい。こんな時代である。東南アジアに親戚ができたことを喜びたい。

    ◇

今朝の新聞は三塚蔵相辞任を報じている。恐慌前夜かもしれぬのに、危機感がない。飢えたことがないから、財政が破綻したらどうなるかの想像すらつかない。国民はなべて平安貴族化している状態だ。

以前オイルショックに揺れたとき、『日本の自殺』という本がでて、冷静に時代の分析をし反省をうながした。今度の不況でよむ本は『父性の復権』 らしい。

地について考え、血について考え。発掘隊員みたいだ。連句をやるときのきぶんみたいに。

すべての生き物は土からうまれた。すべての生き物は土でできている。今号より土を根底に据えた文章を書かせていただくにあたり、大虚子の句と拙句をひき、冒頭の挨拶としたい。

 ほこほこと落葉が土になりしかな*  高濱虚子

 冬の土もうすぐ父が発芽する     姫野恭子 

* 昭和22年作。正確にはほこほこは踊り字表記です。

連句誌れぎおん21号、1998年4月発行より引用。

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コメント

どなたか存じせんが、開いて下さって有難うございます。

もしかしたら、寺田の恭子ちゃんでしょうか?
高校卒業以来、お目にかかっていませんが、内容からもしかしたらと思ってコメントしています。
ずいぶん前の文章なので、コメントを見ていただけるか分かりませんが、もしお目にとまればご連絡をください。よろしくお願いします。

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