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2007年8月11日 (土)

百韻 『ほととぎす』

   百韻 『ほととぎす』

         前田圭衛子 捌

初折

 旅の身へなんと豊かにほととぎす  村田 治男
    青き嵐に染まる山裾        前田圭衛子
  吟醸酒器えらびて注ぐならむ     本屋 良子
    墨痕しるき隷書体なり       船渡 文子
  百畳の間を清めんと襷がけ      高木 一惠
    ふらりと垂るヽ蓑虫の糸      堀内 洋子
  空の洞月光とめどなく吸へり      喜多さかえ
    砧の父にねぎらひを掛け      内田 美子
 黄落を剥がしてみればひよつとこ面  晴野みなと
    後ろ歩きのリアス海岸        鍬塚聰子
  パソコンにチエと名付けて愛でたまふ 姫野恭子
    玻璃のきらめき肌昏れるまで    貞永まこと
  逢ふときはキヤラメル色の木曜日   聰子
    逆断層へ象のトロツト         美子
  一を聞き一を知りをり水を汲む      岡田 麗
    ひびあかぎれは昔々か        薗 理恵
  砲台の跡射るごとき寒の月        内山尚美
    芭蕉忍者といふもをかしき      治男
  禰宜揺する賽銭箱のかろきこと     文子
    田楽茶屋の匂ひたヾよひ       洋子
  湯煙の坂上りくる花の街         良子
    右に曲れば蝶のプリズム       聰子

(中略)

ナウ 秋惜しむ電話口まで昭和なり   原 しょう子
    真面目な顔で受け答えする     麗
   ヴァチカンの広場朝とも日暮とも   理恵
    潮のかたちに眠る方舟       聰子
   大道芸帽子にかかる雪沫(あは)し しょう子
    垣繕ふも閑にあかせて       みなと
   二町歩の花いつせいに咀嚼音    恭子
    エクリチュールに架かるかげろふ  執筆 

    

平成九年五月二十九日起首、満尾〃三十日

    於・神戸市六甲山ビラ、伊丹市柿衞文庫

記憶はうすれます。いつのことだったかを忘れかけていました。連句はひとりではできません。このとし、れぎおん同人が神戸の六甲山ビラに集まって、百韻をまきました。二日かかりです。ほととぎすの声がほんとに聞える山中の宿で、俗世間のしがらみからぽっかりと切れて、連句三昧の二日間。楽しかったなあ。初めてお会いするかたとも、座が一巡するころにはすっかりうちとけて、和気藹々でした。これが九州勢初めての全国区の座での連句でした。(先日引用の、前田圭衛子師が博多へ指導にみえた年のことです)。

貞永まことの留め書きでは、この日は大分から船で来たとあります。船中こどもの泣き声がうるさくて眠れなかった、との愚痴も楽しげです。これからわずか五年後、貞永まことは亡くなるのですが、葬儀に参列したあと、ゆかりの人の車に乗せてもらって、前田師と貞永まことの随筆に出て来る別府界隈をめぐったとき、ほんとにすぐ家の近くにその船着場があるのでたいそうおどろきました。まさに自転車感覚でフェリーに乗ってらしたんだなと。

この座で、まことさんには恋句がまわってき、うんうんと三十分近くも呻吟して皆様をすっかり待たせました。錚々たるベテランの連句人が十四人ほどもいたでしょうか。そりゃだれだって緊張し、固まってしまいます。捌が句を選句しているとき、次はどこでどんな句を出してもいいように、いまなら予想して思案する余裕もありますが、初めてのころは、とてもそんなひまはありません。ただただ何か出さねば、と短冊を握ってうめくだけです。あのときのまことさんの姿、忘れられないなあ。かわいそうで気の毒で。

それがいつのまにか、だれよりもうまくなられて、どの句にも精彩が満ちあふれ、どれを採ろうか、捨てるような句はなにもない・・というまでになられた。いろんな賞もとられたし、テレビの俳句王国だったっけ、出演もなさいました。

前年の秋、母の代理で出かけた別府旅行で、ちょっとの空き時間に貞永さんに会ってれぎおんを手渡し、連句をしましょうと誘ったことが、大きな出会いだったなあと、いま思う。

わたしが初めてれぎおんを読んだとき、ことばにならない感動を覚えたのとおなじ想いを、きっと貞永まことも感じたんだろうとおもう。

1996年秋、俳人貞永まことは連句と運命の邂逅をし、余命を全うして、五年前に没しました。もうじきその遺句集が出ます。

(何となく連句的;http://www.iwatohiraki.com/sirius/hakusan.html

うわあ。この↑のサイト、霊的。最初、菊理姫という名でぎくり、つぎに六甲山頂という地名。で、最初のきっかけが昇仙峡の水晶って。すべてが、シンクロしている。これはなんだろうか。

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