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2007年7月18日 (水)

現代俳句と女たち  4

― 現代俳句と女たち ―

   張形としての俳句   その4

            姫野 恭子

 雪こんこ手足ひろげて落ちるなり 
                中村 マサコ

根性ある浪速の川柳人・倉本朝世が賛を書いた(「どこまでがマサコ、どこからがマサコ」)中村マサコの百句が収められたアンソロジー『俳句百景4』(東京四季出版)を読む。作風も年齢層も多様な俳人が縁あって四十人、一堂に会したものである。東雲を洩れる燭光のいろのひかりの帯が、黒い大地に巻かれている表紙写真がとても印象深い。そして収録されている四千句(!)もの作品も、選びぬかれた句ばかりである。

略歴によると中村マサコは昭和七年福岡県生れ。五十七年、「天籟通信」入会。現在は「國」「豈」「九州俳句」に所属。筑後は久留米の俳人で、私も過日八女市の堺屋で半歌仙をご一緒に巻いたことがある。おっとりゆったり、美しいひとであった。作品も俳諧味よりは詩的情緒のにじむ繊細なものが多い。

冒頭に引用した一句は、百句中一番の句である。深く心にしみるリリカルな句だ。

故・折笠美秋の

 雨だれは目を瞠いて落つるなり  美秋

を連想させるものの、句の味わいはずっと南国的で開放的な屈託のなさがある。

 あざみ剪る玄界灘に膝をつき   マサコ
 風の骨ときどきささりあちこちささり
 産道につづくは青き麦畑
 キャベツの結球はじまる頭廢(しい)たるよ
 かたつむり折檻の音ふるさとは
 青いより他なし青い虫つぶす
 チャイナマーブル転げし畳を荒野とす
 桜前線さて私のいずこより

好みの八句を挙げてみた。どれも感覚的な句柄で抒情的な一本の詩として立つ。それは俳句の場合、きらびやかな衣裳、意匠をまとっている体であるかのようにも思えるが、にもかかわらず、「きゃべつの結球」の瞬間など、これまで誰も詠まなかった事を「頭廢たる」と捉えてみせたのは、やはり俳人の目以外の何物でもない。中村マサコは俳人である。

 かたつむり折檻の音ふるさとは  マサコ

      

 曼珠沙華また折檻の隣りかな  杉田久女

立風書房『杉田久女全句集』 第二巻より「秋雨日記」大正七年一月の「ホトトギス」に載ったもの。マサコの蝸牛に対するに、久女は曼珠沙華という強く毒々しい季語を取り合わせている。日記であり写生句であるとはいえ、久女の句はどこまでも強く、迷いがない。近代女流俳人で九州でのパイオニアは久女である。石橋秀野も久女に傾倒していた。(が、生前まみえたのは久女の弟子分の橋本多佳子であった。当時十歳ほど年長でまだ五十前の多佳子を「別れ蚊帳老うつくしきあしたかな」 と秀野は詠み、言い訳のように「老のうつくしき」という随想も書いている)。
杉田久女を想うとき、私は「張形としての俳句」 の鋳型にぴたりと填まる火のような魂を感ずる。さまざまの詩型のうち、俳句こそが最も大きな張形を要する。それを直感し、もっとも遠くまで意識を飛ばし、きっちり自分の気で充たしたその乾坤一擲のわざは、比類ない。

 谺して山ほととぎすほしいまヽ   久女

「九州俳句」(北九州市、中村重義編集発行)
    
143号 平成18年8月15日刊行より引用

※文中の折笠美秋の一句であるが、まったくの記憶からの抽出であることを断っておきたい。最初九州俳句に引用したときの記憶では、「雨だれは目を見ひらいて落ちるなり」だった。しかし、どうも漢字が違うような気がしてきて、みひらくを瞠目の瞠の字にかえてみたら、お、これだ。と思えてきた。こんないいかげんなことではだめなんだろうが、いつか出あうほんとの正解をたのしみにしていたいのだ。ちなみにこの句に最初にであったのは、谷口慎也先生の「連衆」(福岡県大牟田市)誌であったとおもいます。

※ 杉田久女ですが、『女流俳句集成』(宇多喜代子・黒田杏子編、立風書房全一巻)のなかにある作品を読んでいたら、ちゃんと看護婦をののしる句が採られていた。なんか、知己に会ったようで、うれしかった。こんな句ですが。

 芋の如肥えて血うすき汝かな  久女
  (看護婦をのヽしる句)

句を選んだひとは、正木ゆう子さんです。
   

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