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2007年2月 3日 (土)

『樹』 瀧春樹の叙情

所属誌、大分の「樹」(たちき、大分県中津市三光森山、瀧春樹編集発行月刊俳句誌) が創刊十五周年を記念して合同句集を編んだ。それが先日とどく。代表である瀧春樹主宰の句をひきます。

湖へ散る    

       瀧 春樹(たき はるき)

櫨紅葉乾けば魚の骨ばかり
落葉焚くたび肉体を進む錆び
箸二膳妻へ吹雪の窓開けて
折り鶴が翔んだよ梅が開いたよ
触れたくて触れないでいる龍の玉
蛇に脱ぐ衣あり5勺の酒があり
高きより水落ち瀧になる他なし
あれが葛だよ 全身で漕ぐ車椅子
村人に蟹股多し韮の花
石筍のまぎれて秋の夜を太る
大根引く山の没日へ尻つきだし
大寒の鳥の樹猿の樹朝はじまる
粗忽とは花より先に出てくる葉
子に遺すものなし茄子に花咲かせ
蛞蝓に塩 非常口が見当たらぬ
空蝉へ息吹き込んで敗者なり
霧霽れて楔型文字という反射
生きること即ちいくさ韮咲かせ
旗やがてたたむ国歌よ猿酒よ
村中の酒澄みわたる流れ星
東洲齋寫楽が海へ刷る初日
水禽のあるいは人間嫌いなり
歯を抜いて冬樹の間(あい)が広くなる
鴉にも訛ありけり春田打つ
蒲公英の絮へ埴輪の口が開く
花嵐魚揉みあうばかりなり
踊子草に朝日燦燦たる動悸
藁で束ねて男でござる桜鯛
夏の川愚直に朝の飯が噴く
虹の端をしずめて車椅子のあり

はんぶんを全句引きました。

触れたくて触れないでいる龍の玉

この句ですが、こどものころ、まだことばもよく知らない、六、七歳のころを思い出させます。近くの野辺を仲間と遊びまわっておったのですが、かくれんぼして、よその庭先でふと見つけた龍の玉が、それはそれは美しいたからものに思えて、びっくりして、とろうか、どうしようかと幼心に思ったことが記憶のなかに今もあります。緑の細長い葉叢に隠れてひっそりとある、紫の小さなぴかぴか光る龍のたま。うん、わかるわかるよ!とすなおに感じた句です。すごいなあと思った句です。

東洲齋寫楽が海へ刷る初日

これも好きな句です。あの初日の色は、写楽が海へすり出した版画の絵だというのです。字面、リズム、スケールの大きさ、それにイメージの切り結ぶ世界が一幅の掛け軸のようです。

高きより水落ち瀧になる他なし

瀧春樹その人を指す句であるとかんじます。まさに瀧春樹は一本の瀧の樹です。

季語「龍の玉」http://www3.ocn.ne.jp/~shoonen/kyoshi26.html
                   http://www.geocities.co.jp/Milkyway/7108/sub2.html

追記)
上記のサイトにあった句ですが、

   龍の玉深く蔵すといふことを  虚子
   蛇の鬚に実のなつてゐし子どもかな 草田男

このどちらもよくわかります。ことばでものをおもわざるころに龍の玉に出会った人は、みなそうだろうとおもう。しみじみ、遠くまできたなあと感じます。と同時に、龍の玉は一月の季語だと知りますと、こんなに寒いときでも、元気で平気で外遊びをしておったんだなあと、自分達のこども時代の野生をなつかしみ、いとおしくおもいます。句がそのことに気づかせてくれました。

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