無料ブログはココログ

« ふしぎなであい | トップページ | 横光利一の評文 »

2006年12月20日 (水)

生死を決した生味噌の味

11月17日付の記事「ある俳人の戦記」でご紹介した、山口県の俳人・村中秋天子氏の戦記を、もう一編だけ入力し、ご紹介いたしたいと思います。

   生と死 戦後六十年に思ふ 

         村中 秋天子

 「六十年無名戦士の墓に黴」 
 
 
ソロモン群島ガダルカナル南溟の果ての名もなき島で太平洋戦争の帰趨を決する日米決戦が行われた。ガ島エスペランス、私は某所で最後の覚悟を決めた。マラリヤと栄養失調で最早や重湯も呑めない。足も立たなくなり動く事も出来ない。死 「あゝ自分はいま死ぬるのだ。名もない島で死ぬるのだ。あゝどうせ死ぬるのなら早く死ねばよい」 と叫んだ事を覚えてゐる。夜も眠られない。眠らなくてはと焦るけれどどうしても眠れない。

 そんな時、生味噌が配られた。あゝその味、何も受け付けなかった口が味を覚えた。それからすこしづつ粥が食べられるようになり、足も立つ様になった。ガ島脱出作戦十日前頃と思ふ。

 脱出作戦が十日早かったら歩けないから死、又脱出作戦が十日遅かったら米軍の挟み撃ちにより死、十日が私の生命を救ったのだ。その時歩けなかった人は置き去りになり、モルヒネの注射による死か、手榴弾の自決が待ってゐたのである。

 戦争はいけない!
 
 平和な日が如何に大切なことか。

    平成17年度 湯野俳句会合同句集
             「しろがね」26号より

ガ島撤退秘話:http://www.geocities.jp/honiara_kai/124ht_hiwa/124ht_hiwa_2.htm
日本海軍戦闘史録:http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/3853/clh/jyun07.htm

※ 戦争をかいくぐってこられた人々は、独特の仮名表記をなさいます。現代かなと旧仮名が自然に入り混じるのです。「樹(たちき)」の鮫島康子さん(80代半ばと思います)も、とてもセンスのある達者な現代文をかかれますが、ときおり、ぽろりと「でせう」とか「だらう」とかが混じっています。あたかも私のような田舎者が、都会語(笑)でしゃべっているつもりがぽろりと方言が出てしまうのに似て、哀切です。

山本健吉などの大批評家は、果してどういう表記をしていたのかと思うことがありました。晩年の佐藤佐太郎との共著は旧仮名表記でしたから。一つだけ、健吉が自筆で綴った石原八束の著書への批評文を持っています。十年ほど前に古書店から買ったものです。たしか五千円でした。笑

なにしろ、鉛筆書きの無愛想な文字でした。ほとんど感情の揺れなどないに等しいような。一文字のミスもない現代表記でしたねえ。

私は、連句をさいしょ、札幌の窪田薫師から学びましたが、先生は徹底的に正字表記にこだわられました。そして、それは文学的には非常に反骨的でありつつ本質的なことであったにもかかわらず、文章を打ち込み編集する人たちにとっては厄介な問題を突きつけていたようです。だいいち、ものずごく時間がかかるのです。旧仮名変換ソフトがあればいいのでしょうが、それがないし、旧漢字などは論外です。文字を探してへとへとになるからです。そのことだけにかかりっきりの人はいませんし、たいがい本職の余技として連句を楽しんでおられる人ばかりでしたから、窪田式はなかなかつらかったろうとお察しする次第です。でも、私は、いまとても、おけげで勉強させてもらってたなあとありがたいです。学校は教えてくれませんでしたもの。有名な俳人でも平気で間違っていたりするのが、旧仮名ですから。

« ふしぎなであい | トップページ | 横光利一の評文 »

コメント

記憶があいまいですが、確か大和から生還した人達が、冷たい海を何時間も漂流して、初めて食べた油揚げの入った熱い味噌汁の味が忘れられないというものでした。

味噌は戦国時代の徳川家康の味噌つけ飯を連想します。
今月は俳句、「関」の字を詠み込む課題でした。今朝、あわてて一句二句ひねり投句した中に、
 南関あげのでかさ優しさ団子汁 恭子
があった。南関あげ、ご存じないでしょうね。熊本の南関名産の大きなあげがあるんです。それの入った団子汁が、五木寛之の里の近くの小栗峠・道の駅の定番人気メニューです。おいしくてあったまりますよ。

揚げが大好きなんです。
何にでも揚げを入れます。味噌汁にも揚げが入っているのといないのとでは全然違います。
団子汁に揚げ、想像しただけで湯気が見えます。南関あげは知りません。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 生死を決した生味噌の味:

« ふしぎなであい | トップページ | 横光利一の評文 »

最近のトラックバック

2020年7月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31