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2006年12月14日 (木)

農学者飯沼二郎の目  2

(高橋甲四郎著『父の遺稿』より、「飯沼先生との出会い」を引用しております。昨日からのつづきです。)

 田口さんが自分の荷物を置きに行かれる間、荷物のない飯沼先生と私は、フロントのロビーで椅子に腰掛けていた。しばらくして気になっていたことを飯沼先生に尋ねてみた。

 「先生は最近、ご病気で入院されていらっしゃったとお聞きしていましたが、いまはご健康状態はいかがですか」

 最初、未來社の田口さんから飯沼先生の名前を聞いたとき、私は早速飯沼先生の著書を書店で探した。『農業は再建できる』(ダイヤモンド社)という題の書物を購読した。そして、その本の「まえがき」に、

 「私事になるが、健康を害して入院した私に治療を施し、研究・執筆に復帰することを可能にして下さったお医者さん、看護婦さん方に感謝する」

 とあったので、そのことをお尋ねしたのである。
 飯沼先生は、静かに答えられた。

 「私は、あなたのお父さんと同じように、狭心症だったのです。しかし、いまの医学は非常に進んでいて、風船療法という方法で、ほとんど治ってしまいます」

 飯沼先生の話は続く。

 「これは足の股間の動脈から、小さな風船を心臓の冠状動脈の狭窄部分まで差し込み、その風船を膨らませて、狭くなった血管を広げる治療です。風船は膨らんでも一ミリからせいぜい四ミリまでですから、麻酔の注射がチクッとするくらいで、あとは麻酔のため全然痛みはありません。
 あなたのお父さんも、現在まで生きていられたら、この風船療法でお亡くなりにならなくてもよかったでしょうに・・・」

 飯沼先生は、一見無口のように見えるが、なかなか話題が豊富で、話好きのようでもある。
 田口さんが部屋から戻って来られたので、再度私の車に二人を乗せて、約十分足らずで自宅に着いた。
 家では妻が座敷に三人分の夕食の支度をして待っていた。三人でビールでのどをうるおし夕食を始めたが、ここでも飯沼先生がいろいろな話を始められた。

 「熊本県の農村を訪れたとき、・・・」

 と、九州各県の農家の実態を、自分の体験を交えて、実に詳しく具体的に話をされる。先生独特のくぐもった口調である。難解な農業専門用語が次々と飛び出してくる。田口さんは傍らで、黙々と食事をしながら耳を傾けていられた。
 食事が終わってから飯沼先生に、

 「では、お父さんのご遺稿を見せていただきましょうか」

 とうながされ、三人で遺稿を保管している二階に上がった。

   遺稿調査

 二階には、お二人がみやすいように、分冊になっている数十冊の遺稿を、あらかじめダンボールの中から取り出して座敷一杯に広げておいていた。飯沼先生はこれらを一冊ずつテーブルの上で一枚一枚開いて見ながら、乱雑に走り書きしてある父の原稿を、食い入るように読んでいられた。一、二時間ほどご覧になられたであろうか、

 「では、明日また見せていただきましょう」

 と言われ、田口さんと一緒に二階から降りて玄関を出られたので、私は車でホテルまで送って行った。午後九時を少し過ぎていた。(あすにつづきます)。

 高橋甲四郎著『父の遺稿』(海鳥社2001年)から引用。

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