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2006年8月24日 (木)

ハゼ 2

先日のハゼ句で思い出したのですが、数年前、芭蕉七部集「冬の日」五歌仙の真ん中に置かれた杜國(とこく)が発句を詠んでいる巻にある名残の折、裏のたて句(つまりあげくの六句前)にはぜの句(杜國)がありまして、それを読んでいたらひらめくものがあり、二枚ほどにまとめて、小学館の古典全集月報を書いておられた菊池昌治先生(ちょうど琵琶湖の魚について書かれていた)と、私と同じ福岡出身の文士であり連句人でもある眞鍋呉夫先生に「こんな読みはどうでしょうか」とお手紙をお送りしたことがありました。

当時はワープロを使ってまして、それが壊れてかなり経ちます。メモリーが残っていないのが残念です。自分でもかなり面白いよみでした。間違いでもなんでも一気に読ませるイキオイがあったんですよね。いま、それを再現しようとしても、同じものは二度と書けません。笑

でも、もう一度書いてみます。こういうことです。

「冬の日」第三歌仙

(おもて六句)

  つえをひく事僅に十歩

つヽみかねて月とり落す霽(しぐれ)かな   杜國

  こほりふみ行(ゆく)水のいなづま     重五

歯朶(しだ)の葉を初狩人の矢に負(おひ)て   野水

  北の御門をおしあけのはる        芭蕉 

馬糞掻(かく)あふぎに風の打(うち)かすみ  荷兮(かけい)

  茶の湯者お(を、のミス)しむ野べの蒲公英(たんぽぽ) 正平

  

ー初折の裏十二句と名残の折おもて八句は中略ー

(名残おもて九句目からなごりうら六句まで)

あだ人と樽を棺(ひつぎ)に呑(のみ)ほさん  重五

   芥子のひとへに名をこぼす禅      杜國

三ヶ月の東は暗く鐘の聲            芭蕉

   秋湖かすかに琴かへす者        野水

烹(に)る事をゆるしてはせを放(はなち)ける  杜國

   聲よき念佛(ねぶつ)藪をへだつる    荷兮

かげうすき行燈(あんどん)けしに起(おき)侘(わび)て  野水

   おもひかねつも夜るの帯引(おびひき)   重五

こがれ飛(とぶ)たましゐ(ひ、のミス)花のかげに入(いる) 荷兮

   その望(もち)の日を我もおなじく    はせを 

以上です。ナウ(なごりうら)の杜國の句に「はせを」とあります。それと挙句を詠んだ「はせを」芭蕉が重なるのは偶然とはおもえない。(濁点は昔は表記しなかったので)。これは岩波書店の黄色の文庫本から引用していますが、中村俊定校注です。その注意書きに「はぜー京大本は、はげと誤刻」とありまして、あっと思いました。というのは、ちょうど折りよく、「ぎぎ」という啼く川魚のことを必死こいて調べていたときで、図書館の図鑑に、ぎぎ、ぎぎゅうの別名として「はげ、はげぎぎ」というのがあったわけです。それで、そこが私のあさはかなところでして、「あ、これはきっとギギのことを詠んでいるんだ」と思ってしまったのですね。

すると、どうよめるか。

秋の湖で琴をおさらいしているかすかな音が聞こえる。(野水)

それはギギで、琵琶湖では今でもよくとれるが、下手すると噛み付かれて三年うずきがするほど痛い。しかもさかなはぎーぎーと啼く。あったまに来て、はげぎぎをまた、ぽいと水にかえす。(とこく)

その放免した理由は秋の放生会だったからで、はげあたまのおぼうさんの念仏が藪を隔てて聞こえる。(かけい)

・・というふうに、ま、戯画タッチに野生的なおもしろさが眼前にひろがったわけですよね。

付けと転じで進める連句の味わいは、ことに古典ともなると、当時、常識として読めた「暗黙の了解事項」が消えてしまっていて、いまのものにはどこが面白いのか、ぜんぜん見えなくなっています。だから、私のこのようなよみも、アリかなあと思いました。

さすがに、菊池先生は現在の琵琶湖の事情からの資料をたくさん送付してくださり、また、眞鍋先生は、私が忘れたころ、つまりその年の年末に、きちんとしたお返事をくださいました。それには、おもしろいので、どこかに発表なさったらどうでしょうか、とありました。笑

いそがしくて、すっかりわすれておりました。おもしろいですね。

参照:ハゼの名称はどうしてはぜなのか。http://www.manabook.jp/zacko06-haze-goby.htm 

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コメント

きゃ。おもしろい。
こんなところにあったのか。

きのう、ひる、母と叔母を連れて、くまもとのあいら観音にお参りしました。
おりよく、日本でここにしかないというアイラトビカズラの野性的な花が咲いていて、それ、写してきました。
手に届くところにフジの花みたいに下がっていたので、つい大きな花房に触れてみたら、先端が尖っていて、チクリとした。
帰りには平山温泉のごひいき、上田屋で貸切のようなひとふろ。極楽ごくらくの一日でありました。

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