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2006年7月 7日 (金)

現代川柳『点鐘』117号

スミサクさんに戴きました。拝読いたします。

毎号一人ひとりの作品にコメントを付けきっちり全員分掲載される。その律儀さ、ひたむきさ。そして、無駄を極限まで廃した装丁。(隔月刊。二つ折で八十円で郵送可。)全てにおいて、川柳独特の美学と志を感受します。

掲載順に印象的な句をひきます。

 これがゴリこれは川エビ試食する   草津市  畑山美幸

 西の湖のにごりの中に眠りたい            〃

(西の湖とは安土城近くの湖らしい。ゴリ句の次のにごりの句、出色。)

   百済観音賛歌(前書あり)

 君の前でぽかんと口を開けている   和泉市 小池正博

 光背になって千年待つつもり

 手首にもわずらわしきもの巻いている

 水瓶をふわっと拾う風の揺れ

 高さとは少女のままでいることと

 十年後会ったときにも春のまま

つい全句引用。すごくいい。見直した。ってか、教えられた。私は百済観音と救世観音とがいつもごったになって、梅原猛著「隠された十字架」や吉野裕子の本のイメージに侵食された想いしか持てなかったのです。ということは、私の中では百済観音は聖徳太子であり、北斗七星であったわけです。でも、今回調べてみたら、それは虚空蔵菩薩(!)であり、ほかにもいろいろわかりました。さて手首には何を巻いているのでしょう。輪ゴムか。笑

http://www.tabian.com/tiikibetu/kinki/nara/horyuji/

http://www.butsuzou.com/jiten/kudara2.html

 中空を自転車男こぎ登る   神奈川県 渡辺隆夫

この句、すみさくさんのあとがきで事故で亡くなられた柿木英一氏への追悼句だと知りました。

 母に何かがあって蛇口全開中  札幌市 熊谷美智子

 裸婦像をまぶしく仰ぐおばあさん        〃

「大通り公園に総ての花が咲いて賑やかな笑い声が聞こえる。緑の中に啄木像があって、ソフトクリームを歩き乍ら口にする修学旅行生。風向きで噴水をかぶってしまう。それを思う。」ースミサクさんのコメント、あたたかな写生。

 年寄りになろう庭箒を持って    名古屋市 神谷三八郎

年寄りになるのには脱力がいる。力って入れるより抜くのが難しいのだ。まずレレレのおじさんから始めよう。さんぱちろうさんの境地はもっと高い。

 そよ風は窓から少女の薄いスリッパ  松原市 本多洋子

薄いスリッパが健闘。ことばのひびき。

 断ち切ってしまえば流れにくくなる    高槻市 笠嶋恵美子

断ち切るには未練が残る、ってことかしら。

 膝の骨 気骨の骨を撫でている    富田林市 西村夕子

気骨のホネは膝のホネ。そうかな。なるほど。

 ひとりなら濡れたりしない傘を干す   富山市 舟渡杏花

 一本の野火が横切る日記帳      福岡市 清野玲子

 納豆のねばねば家庭裁判所      堺市 里上京子

 前衛のつもりで咲いているさくら       〃

 荒れる海見てから金魚おとなしい    高松市 若草はじめ

この句ですが具象句として読みますと、海が見える窓際が浮かびます。私は知らんのですけど、金魚って出身はどこでしょうね。海?川?アマゾン?荒れる海、金魚のおとなしさ。いつだって何にだって感情移入している作者がせつない。

 覚えたたての寿限無を聞いて下さるか  西宮市 佐藤純一

 首の皮一枚 ぐるぐる廻る洗濯機       〃

首の皮一枚で繋がって、まいにち渦のなかで自動的に廻る廻る。

 ロボットに涙腺は無い ガラスの森   札幌市 加藤かずこ

 ランダムな田植えでも米世界一     札幌市 干野秀哉

と言ってる間に、たちまちコメ輸入国に転落するだろう。自分の問題でもあり、確実にそういえる。

 みの節が冴え 糖尿病が増え   東京都 杉戸金一

 暮色へと迷わず走る救急車   名古屋市 中山恵子

 子を帰すために広げる新聞紙    〃

たとえば下宿してる娘にいろいろなものを新聞に包んで持たせる。救急車の句もすごくうまい。

 田舎の暮し 叩かれぬ土竜になる  鈴鹿市 小川柳女

どういうこっちゃ。うーむわかるようでわかんない。モグラとして好き勝手あちこち出没さしてもらうってことかいな?むしろ叩かれたほうがよくないか。ってか、叩きたい。笑

 黒豆のおかきそれなりのプライド  橿原市  西沢知子

 この辺がいいと埃をはらってる     〃

うんうん。黒豆のおかきって頑固なキコツがある。だいすき。あっさりしてもいる。すみさくさんの連句的コメントが又、泣かせるよー。「埃を払えば食べられるとは母の口ぐせ。もったいないと砂まみれの飴を水で洗って口にした事も。」

 入社して弾むこころが蝶になる  大阪府 若山 衛

こういう幸せな場面の句を読めてしあわせだ。マイナスのばっかり読んでます。

 雑学ゆたかに老いを旗揚げするか  新潟市 藤井比呂夢

「老いはそれなりが良いと思っている。」スミサクsaid.(Me,too.)←あほか。

 犬歯なら郵便受けに生えている  湘南市  平賀 胤寿

そうですね、そういうふうに見えます。で、それがなにか。

 薄紅の薔薇の意匠は誰がためか  堺市 小田明美

薔薇自身のためだとおもう。

 生活が掛かっている迷惑駐輪  川西市 一階八斗醁

どっちからも読めます。迷惑しているほうと、そこまでして駐輪してるほう。

 塗り絵に納まる年金のクレヨン  相模原市 瀧 正治

いま、大人の塗りえが売れている。誰が買うの。ハイ、ここにあります。

 粽を食べて昔話がしたくなる  尼崎市 春城武庫坊

 夢なんか見ないで少年健やかに  尼崎市 春城年代

 むかしの軒に今年の燕来てくれる    〃

いいなあ。この年代さんの二句。少年は夢なんて見ないよね、全くその通り。夜見る夢も、将来の夢も。それで一向にかまやしません。むかしの軒に今年のつばめが来てくれる。これなんて、やさしいよね。あたしゃなきそうだよ。こういう人がいるから又来年も燕はくる。

 落下する長い時間を欲しがりぬ (柿木英一追悼)姫路市 前田芙巳代

 男は無口かるい覚悟のある手帳   〃

 名もなき草の名を告げられし五月闇  〃

柿木さんは愛されていたのですね。こんなふうに詠んでもらえて本望でしょうね。

 夕日双塔あたりに極楽のとびら(当麻寺) 葛城市 阪本高士

 芍薬も牡丹も母に逢いました   〃

夕日の句ですが、ふしぎと弾力あるリズムをもつ音楽みたいな句です。

 ピーマンの花粉と五月病になる  弘前市 北里深雪

 沈んではいるがかきまぜて欲しい   〃

 うたかたやかりかり食べる ただ食べる   〃

 いっさいがっさいかっぱえびせんたべる音   戸畑区 鍬塚さとこ

 日溜りも八十才のがけっぷち  札幌市 中村迷迷亭

 飛入りが先導をする 村祭り   〃

 そこまでと神に言わせる日もあろう  〃

 飛ぶ絮毛 別れの痛さ追うように  〃

なぜかファンになった中村さんは八十歳ですか。そこまでいけば、みえてくるものがあるんだろうか。あるんだろうとおもいます。「摩天楼」の俳人・小川原嘘帥氏の句に、

 八十路には八十路の若さ今年竹    小川原嘘帥

この句は、中村さんの句と似た味わいがあるとおもいます。

 お茶会の床の間飾り 仏手柑  弘前市 諏訪夕香

あれはなんだろう。必ず床の間に何か季節のものを飾る。お茶会もですが、連句も正式には芭蕉の御影を飾ったりします。共通の精神があるんでしょう。

 勉強の嫌いな一本道もある  石巻市 保田二郎

小学六年のとき担任だった先生は、三十過ぎの独身だった。絵と蝶とりが大好きで、その影響を全員が受けた。戦争がえりの暴力教師で、怒れば往復びんたで教室一周ってこともあった。反面、そのころまだあった乾布摩擦で上半身はだかになると、発育のいい女子のムネをいやらしい目でぶしつけに見ていた。いまにしておもえば、なんて牧歌的な時代だったことか。その先生になぜか私はひいきされていて、それがとても苦痛だった。或る時、いつも宿題をしてこないH君が往復びんたをくらった。「なんでおまえはしてこない」「勉強するより叩かれたほうがましだからです」・・・今でも浮かぶ。いま、どうしているだろう。 

 鶯をじっと二時間聴いている  堺市  南野勝彦

 淫らですかとチュウリップ訊いてくる   〃

 貯め池とお山 明日の天気話している  〃

ことしは鶯がなぜか来ませんでした。一心行の桜を見にいったとき、山に鳴いていました。

 少年が並ぶ三角の美しさ  大阪市 北川アキラ

 天を指し地を指し感電する女神   〃

 御飯でもメシでも自動炊飯器   千葉市 西秋忠兵衛

炊飯器をよく買い換える。置き場所がなくて火の近くに置くからです。たいてい二年三年で駄目になります。最短一年というのもあったなあ。受難の炊飯器ですが、こんどのはすごいです。御かまだきに限りなく近づきました。保湿機能つきです。大事にします。もういじめません。

 

 

         

 

 

  

 

 

   

  

 

  

  

 

 

 

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